中国・恒大集団会長が拘束された「本当の理由」 “偽装離婚”した妻が「カナダへ極秘出国」情報で“瓦解”を始めた破綻処理スキーム
習近平政権が「沈黙」を貫く背景
中国政府がもっとも恐れているのは、中国を出た丁氏が「保有する恒大株の権利をアメリカの金融機関などに預けたりする」(田代氏)ことだという。
すでに恒大は米ニューヨークの裁判所に連邦破産法15条の適用を申請しており、認められればアメリカ国内の恒大資産はすべて会社更生手続きに向けた保全対象となる。
「もちろん保全措置が取られれば、丁氏自身も引き出しなどはできなくなりますが、一方の中国政府も差し押さえなど一切の手出しが不可能となります」(田代氏)
許氏の拘束情報が出てから、中国政府は声明を出すこともなく、沈黙を貫いている。それが逆に「事態の深刻度」を物語っているわけだが、背景にあるのが「恒大をまだ潰すわけにはいかない」との習近平政権の思惑という。
「中国政府が最優先に掲げるのは、恒大が販売したマンションすべてを何としても完成させ、購入者への引き渡しを完了させること――です。恒大の引き渡し未完了の物件は一説に“150万戸を超える”とも伝えられており、処理を誤れば住宅購入者の不満の矛先が恒大から政府へと向かいかねない。そのため恒大が保有する膨大な資産を原資に利用してマンション建設だけは完了させるというのが中国政府の方針でした。ところが今回の許氏と丁氏による資産の海外移転疑惑によって、この処理計画に大きな狂いが生じかねない事態に直面したのです」(田代氏)
丁夫人の出国を許した時点で“中国政府に打つ手はなくなった”と囁かれるウラで、中国国内では秘かに「許夫妻がまんまと政府の鼻をあかして“一本”取った」と喝采の声が上がっているという。