中国・恒大集団会長が拘束された「本当の理由」 “偽装離婚”した妻が「カナダへ極秘出国」情報で“瓦解”を始めた破綻処理スキーム
中国の不動産開発大手「恒大集団」創業者で会長の許家印氏の「拘束」情報が流れてから1週間以上経つが、いまだ詳しい容疑は明らかにされていない。しかし徐々に問題の核心部に触れる報道は出始めており、それはデイリー新潮が8月24日に報じた「許氏が妻と偽装離婚して資産隠し」を図った疑惑を裏書きするものだ。恒大と中国当局の攻防のウラ側を暴く。
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【写真を見る】中国経済紙が報じた許家印氏の“糟糠の妻”が極秘出国した「証拠」資料
許会長に“異変”が起きていることを最初に報じたのは米ブルームバーグ通信で、9月27日に「許氏が警察当局の居住監視下に置かれている」と伝えた。それを受け、恒大集団は翌28日、許氏が犯罪に関わった疑いで「当局による強制的な措置の対象になった」と発表。
中国メディアは同日、恒大子会社に勤務する許氏の次男と傘下の関連会社元会長も「当局に連行された」と報じたが、詳細には触れなかった。しかし10月2日、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙が「海外に資産を移転しようとした疑いで許氏が調査を受けている」と報道したことで、疑惑の一端に初めて光が当てられることになった。
この間、実は日本では報じられていないが、ある中国メディアが放った“特ダネ”が秘かに話題となっていた。中国事情に詳しいインフィニティのチーフエコノミスト・田代秀敏氏が話す。
「中国の経済専門紙『毎日経済新聞』が9月29日、許氏が強制措置を受ける前の7月に(許氏の)“糟糠の妻”である丁玉梅氏が長男の許智健氏とともに香港から出国。丁夫人はカナダ(加拿大)のパスポートを所持しているとスクープしたのです」
「カナダ国籍」取得の可能性
すでにデイリー新潮では8月、恒大が上場する香港証券取引所に提出した文書内で、株主でもある丁夫人について、これまでの許氏の配偶者を示す“丁太太(丁夫人)”との呼称から、〈丁玉梅女士〉との一般呼称に変更された事実を指摘。さらに文書では丁夫人について〈当社及びその関係者から独立した第三者〉と明記され、これを見た香港や中国の市場関係者の間で「許氏は技術性離婚(偽装離婚)して夫婦の資産を保全する行動に出た」との声が広がっていることを報じた。
「毎日経済新聞は丁氏が恒大集団の株式51.71%の権利を保有していることも報じています。同株は許氏との共同名義と考えられますが、仮に丁氏がカナダに渡ったとしたら、恒大をめぐる状況は一変しかねません。パスポートを所持しているということは、すでにカナダの国籍か永住権を取得している可能性も排除できず、そうであればカナダにいる丁氏に中国の法律は及ばない可能性も出てくる。また中国政府もヘタに動けば外交問題へ発展しかねないため、丁氏に対する強硬措置も取れなくなります」(田代氏)
同時に出国が事実とすれば、中国政府が描く恒大集団の処理スキームにも重大な影を落とすことになるという。
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