現役大統領として初めてストに参加…バイデン政権の労組重視の裏に「AI失業」という難題

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米アマゾンはなぜ提訴されたのか?

 米連邦議会は現地時間9月30日、予算の執行を11月中旬まで継続できる「つなぎ予算」を超党派で可決した。このことで、米国の政府閉鎖は土壇場で回避された。だが、10月1日から始まった2024年会計年度予算の成立の目途は立っておらず、予算失効に伴う政府閉鎖のリスクは依然として残っている。

 政治の混乱は金融市場にも波及した。

 財政の混乱を警戒した米国債売りが進み、米長期金利の指標である10年物国債利回りは9月下旬に4.6%台と、2007年10月以来の高水準となった。金利の上昇は米国経済にとって大きなマイナスだ。

 好調さを維持する米国経済に政治が暗い影を投げかけている形だが、バイデン政権はこのところ、経済活動に介入する動きを活発化させている。米国では長年「政治が経済に介入しないことが良し」とされてきたのにもかかわらず……である。

 米連邦取引委員会(FTC)は9月26日、反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いで米アマゾン・ドット・コムを提訴した。FTCが問題視したのは、ネット通販大手の米アマゾンがプラットフォーマーとしての地位を濫用し、外部の出店者に様々な圧力をかけた疑いがある点だ。

 大企業偏重の分配を見直し、労働者の生活水準の底上げを図る方針を示すバイデン政権は、FTCの幹部として巨大IT企業に批判的な学者や弁護士を多数登用している。今回のアマゾン提訴は、その成果の表れだと言っても過言ではないだろう。

労働者の側に立つバイデン氏とトランプ氏

 米国ではメデイアが「ストの夏」と言うほどストライキが多発している。米コーネル大学によれば、9月27日時点までに300件近くのストが実施されたが、秋口以降もストが続く可能性が高いと言われている(9月28日付日本経済新聞)。

 労働組合の影響力は長期低落傾向にあったが、ここに来て「利益が労働者に公平に分配されていない」との積年の恨みを晴らすかのように大幅な賃上げを要求している。

 中でも注目を集めているのは、全米自動車労組(UAW)のストだ。

 ジョー・バイデン大統領が9月26日、UAWがストを続ける米中西部ミシガン州デトロイトを訪問し、UAWへの支援を表明した。現職の大統領はこれまで大規模ストを仲裁する立場をとり、どちらかに肩入れすることを避けてきたが、バイデン氏は現職大統領として初めてストに参加し、「あなた方は大幅な賃上げに値する」と表明した。

 次期大統領選でバイデン氏のライバルになることが有力視されているドナルド・トランプ前大統領も9月27日、ミシガン州を訪れ、「外国ではなく米国の労働者を守る」と応酬した。

 バイデン氏とトランプ氏の動きは「不満を高める労働者の票の取り込みが目的に過ぎない」と解説されているが、筆者は「もっと根の深い問題がある」と考えている。

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