ロシア軍は戦々恐々…米国がウクライナに供与を決めた長距離ミサイル「ATACMS」のトンデモない実力 専門家は”微妙なさじ加減”に注目
ロシア空軍の基地も攻撃可能
ストームシャドウも輸出版は射程距離が280キロある。ATACMSの300キロとほぼ互角と言えるが、性能の差は大きいという。
「ストームシャドウは航空機から発射する必要があり、ウクライナ空軍は数機しか持っていないSU-24戦闘爆撃機を使用しています。機数が足りないのは明白で、いつでも爆撃機を飛ばせるわけではありません。ところが、ATACMSは高機動ロケット砲システム『HIMARS』からの発射が可能です。おまけに、ストームシャドウの最高速度は音速(マッハ1)未満の亜音速ですが、ATACMSはマッハ3で飛びます」(同・軍事ジャーナリスト)
ウクライナ南部の都市ヘルソンは、反攻作戦における重要拠点の一つ。このヘルソンからセバストポリの距離は約250キロだ。
「ATACMSを使えば、ウクライナ軍はクリミア半島に駐留するロシア軍を広範囲に攻撃できます。例えば、アゾフ海沿岸の都市ベルジャンシクにはロシア空軍の基地があり、戦闘機や軍用ヘリである程度の航空優勢を確保しているとされています。しかし、ウクライナ領内からATACMSを発射すれば、基地を攻撃できます。甚大な被害が出るのは確実で、一定期間、離着陸を不可能にすることが可能です」(同・軍事ジャーナリスト)
封じ込められるロシア軍
アメリカは以前からHIMARSの供与は行っており、ウクライナ軍はフル活用している。そして重要なことだが、HIMARSがロシア軍の攻撃を受けて破壊されたという報道は今まで一つもない。
「HIMARSが発射するロケット弾の射程距離は約80キロです。ロシア軍は着弾地点から発射地点を算出するレーダーシステムを稼働させており、その範囲は30キロから40キロと推定されています。榴弾砲なら撃たれても発射地点を割り出せますが、HIMARSだとお手上げです。情報の精度が高いことで知られているオランダの戦争研究サイト『ORYX』でも、HIMARSの損害は確認されていません。そしてATACMSに至っては射程距離300キロですから、“絶対的な安全地帯”からロシア軍の重要拠点を攻撃することができます」(同・軍事ジャーナリスト)
ロシア軍がクリミア半島に拠点を置く司令部、兵站、軍港、空軍基地は、大半が射程圏内となる。ロシア国内とクリミア半島を結ぶクリミア大橋を標的とする可能性も高い。
「ロシア軍は今、ウクライナ領内に攻め込む考えはありません。ATACMSが実戦配備されれば、さらに自陣内に引きこもるでしょう。ロシア軍を封じ込めることができるわけですから、ウクライナ軍にとってはまさに戦術核を手にいれたほどの価値があります。ATACMSでクリミア半島のロシア軍を集中攻撃すれば、反転攻勢に強い追い風が吹くのは間違いありません」(同・軍事ジャーナリスト)
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