ジャニーズ問題の闇 事務所を退所しただけで仕事を奪われたタレントをどう考えるべきか

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NHKの現体制ではジャニーズは復権できない?

 NHKの同事務所への新規契約は行わないという方針により、紅白歌合戦に出場するジャニーズ勢がゼロになるのは確実。紅白の出場者が発表されるのは11月中旬で、それまでに山名氏が言った「補償や再発防止策が着実に実施されるのを確認」するのは不可能に近いからだ。

 紅白の出場者は例年、クリエイターエンター(旧制作局)の音楽番組担当者たちが決める。今年は前提条件づくりを理事会が行った。そもそも、この時点で紅白のジャニーズ勢がゼロになることが決まった。

 日銀出身の稲葉延雄会長は別とし、実力者でナンバー2の井上樹彦 副会長は元政治部長。キレ者として知られるナンバー3の小池英夫・専務理事も元報道局長で、林理恵・専務理事は元国際放送局長。山名氏は制作畑だが、「鶴瓶の家族に乾杯」などハートフルな情報バラエティを手掛けてきており、ジャニーズ事務所が絡む音楽番組やドラマは縁がなかった。

 ほかの理事6人は報道畑が2人、教育番組畑が1人、制作畑が1人、人事畑と技術畑が1人ずつ。圧倒的に報道色が強く、同事務所に甘い判断など下すはずがなかった。それどころか、同事務所の復権も難しそうだ。

事務所とNHKのこれまでの関係は調査せず

 一方で理事会は、ジャニーズ事務所とNHKのこれまでの関係は調査しないことを決めた。

「甘いと言われるかもしれないが番組の中で1つ1つ取り上げ、国民に説明したい」(稲葉会長)

 これについて民放幹部は「調べたら大変なことが発覚するから、出来ないのではないか」(民放幹部)と訝しむ。

 民放幹部によると、ジャニーズ事務所は民放各局の番組担当者に20万円相当のスーツお仕立て券などを中元・歳暮として贈っていた。市民感覚とは懸け離れている。NHKの場合、どうなのだろう。

 2009年から昨年までの紅白にはジャニーズ勢が4~7組も出場してきた。2009年には半年前に期間限定でデビューしたばかりで、シングルが1枚しかなかったNYC boysが出場。2015年にはヒットがないにもかかわらず、当時はジャニーズ勢だった近藤真彦が「ギンギラギンにさりげなく」(1981年)で16年ぶりに出場した。しかも白組のトリだった。

 紅白は受信料から1億円規模の制作費を使う。すべて視聴者から集めたカネだ。ところが出場者の選考過程や曲順はブラックボックス。制作費の使途明細も不明。紅白が税金を使った公共事業だったら、納税者によって監査請求を起こされるのではないか。なぜ、受信料だと許されるのか。

 2004年、紅白のプロデューサーが巨額の制作費を横領し、逮捕された。この時、視聴者からは「紅白を廃止せよ」との声が上がった。廃止論を再浮上させないためにもジャニーズ事務所とNHKの関係の調査は不可欠だ。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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