ジャニーズ問題の闇 事務所を退所しただけで仕事を奪われたタレントをどう考えるべきか

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井ノ原の評価は「狡猾」

 日本のアニメ映画が世界最高水準なのは知られている通り。「THE FIRST SLAM DUNK」(2022年)は海外のファンを感動させた。実写映画もレベルが高い。「ドライブ・マイ・カー」(2021年)は第94回アカデミー賞国際長編映画賞などを受賞した。

 ドラマはどうかというと、海外に大きく後れを取っている。「VIVANT」(TBS)などが気を吐いたものの、海外でもヒットする作品は皆無に等しい。良い俳優であろうが、ジャニーズ事務所を退所しただけで、ドラマに出にくくなるようなことが許されているのも理由の1つに違いない。

 新社長に東山紀之(57)が就き、藤島ジュリー景子前社長(57)が代表取締役に就任することが発表された9月7日の会見には、ジャニーズアイランド社長の井ノ原快彦(47)も同席した。その受け答えは世間から好評を博した。

 だが、民放マン、芸能事務所の反応は違う。「井ノ原氏は狡猾」と評された。井ノ原が忖度について、こう語ったためだ。

「(これまでも忖度を)なんでこうなのと疑問に思うことがあった。昔、ジャニーさん、メリーさんが言ったことを守っている(テレビの)古いスタッフがいる。忖度は日本にはびこっている。(なくすためには報道陣にも)ご協力いただきたい」(井ノ原、9月7日の会見で)

 まるで他人事だったが、忖度は局が好きでやっていることではない。背景にはジャニーズ事務所の意向がある。報道陣の協力によってなくなるものでもない。反面、同事務所側がキャスティングへの口出しを一切止め、さらに民放各局に「忖度は止めてもらいたい」と東山社長名で文書を渡せば、たちまちなくなるはずだ。

退所組の利益の補償も同時に検討されるべき

 タレントの降板を武器にしてキャスティングを思いのままにする手法は、1980年代にメリー喜多川名誉会長(2021年に93歳で死去)が確立した。当時は田原俊彦(62)、近藤真彦(59)、野村義男(58)のたのきんトリオが人気絶頂で、民放は田原と近藤に出演してほしいからメリー氏の意向に従った。長い歴史がある。

 もっとも、この手法はジャニーズ事務所が考えていなかった形で、ようやく崩れようとしているのはご存じの通り。

 NHKは9月27日の定例会長会見で、同事務所の所属タレントの出演依頼は当面行わないと声明した。専務理事で制作・報道現場のトップである山名啓雄メディア総局長が「補償や再発防止策が着実に実施されるのを確認するまでは、所属タレントの新規の出演契約は行わない」と表明した。

 これにより、ジャニーズ勢への同情の声はより高まった。「タレントに罪はないのに」と言われている。では、同事務所を辞めただけでテレビでの仕事を奪われた退所組には何か罪があったのか? ジャニーズ事務所と局が、退所組の生活などを微塵も考えずに行ってきたことではないか。

 ジャニーズ勢の救済を考えるなら、退所組の利益の補償も同時に検討されなくてはならない。もちろん、性加害の被害者も速やかに救済されなくてはならない。

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