自分の価値観を全否定されて号泣、脳梗塞で入院した義母にありえない陰口… 41歳夫が妻に感じる人間性への疑問
誰かと電話していた妻…
だが、そんな「同情」を彼女は嫌った。プライドが邪魔したのだろう。少し心が近づいたかと思うとまた離れていく。そんなことの繰り返しだった。
「娘が小学校に上がってすぐのことでした。無理していた母が病気になってしまったんです。軽い脳梗塞でしたが、しばらく入院しなければいけない。ある日、僕が帰宅したら妻が誰かと電話で話しているのが聞こえたんです。『そうなの、使えない母親よ。こんなときに倒れるなんて』と言っていたんですよ。これには本当に腰が抜けそうに驚きました。僕がリビングに入っていくと、妻はさっと電話を切った。誰と話していたのかと問うと、別にいいじゃないって。電話を取り上げて確認したら、彼女の妹でした。妹とは一度だけ会ったことがあるんですが、妻は妹のことも嫌っていたはず。でも実は裏で連絡を取り合っていたようです」
きみのことがわからない、妹とは疎遠だったんじゃないのかと聞くと、「妹は最近、離婚してから連絡を寄越すようになった」と言う。晋さんは、妹に会って希代子さんのことを聞いてみようと決めた。
妹も希代子さんとの生活は無理だった
電話をしてみると、義妹は「姉がいつも申し訳ありません」といきなり言った。
「会って話しました。義妹はごく普通の価値観をもっていた。『姉は昔から母の言いなりだった』と言っていましたね。自分の役に立つ人間には愛想がいいけど、敵対したら絶対に許さないほど激しい性格でもある。『姉は母に呪いをかけられていたんだと思う』と言っていた」
よく長年、一緒に暮らせますねと義妹は晋さんに言った。義妹自身、学生時代に希代子さんと生活しようとしたのだが、とても無理だったそうだ。妹を使用人のようにこき使うのだからと、義妹は涙ぐんだ。
「僕の母も希代子に使われて病気になりましたよと言いながら、オレはなんて親不孝なんだろうと思いました。僕は僕で、希代子に呪いをかけられていたのかもしれない。母に申し訳ないことをした。急にそれに気づいて涙ぐんでしまったんです」
向かい合っていた義妹は、あわてて晋さんの隣に座り、背中をさすってくれた。そうされればされるほど涙が止まらなくなった。希代子さんに会って以来、好きになったのだからうまくやっていかなければと思い、少しずつでも彼女のもつ緊張感をほぐしたいと願ってきた。だがその結果、彼は自分を見失ったのだ。それに気づいた彼は、体中の力が抜けてしまった。
「とてつもなく大きな過ちをおかしたと思いました。どうしたらいいかわからず、パニックになっていました。義妹と一緒に喫茶店を出たけど、支えてもらわないと歩けない。気持ちが悪かったし、休みたかった。それで手近なホテルに入ってしまったんです。義妹には帰りなさいと言ったつもりでした」
ふと目覚めると、半裸の義妹が隣にいた。晋さん自身も下着姿だった。ふたりでベッドに潜り込んでいるのだと、しばらくたってからようやく気づいた。
「義兄さん、姉より私のほうがいいでしょと、義妹が言ったんです。義妹もまた、希代子とは違う魔物にしか見えなかった。あんなに気分が悪かったから、義妹と何かしたとは思えなかったけど……」
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