「病院選びで一番大切なのは看護師」「看護師数が最も充実している県は…」医師が提言 「大卒看護師10%増加で死亡率は5%低下」という調査も

ドクター新潮 ライフ

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看護師の奪い合い

 ところが、わが国では、未だに看護師の人手不足が解消される道筋が見えていないのが現状です。先の研究では、患者4人に対して1人の看護師を配置することが推奨されていましたが、日本の看護師の配置基準は7人に1人。

 この基準は「7対1入院基本料」と呼ばれるもので、導入されたのは06年のことです。各病院の看護師の配置を充実させるため、入院患者7人に対して看護師を1人以上配置している病院に、患者1人当たり1日1万5550円が診療報酬として支払われることになったのです。病院の看護師を増やすという意味で、一見合理的に見える報酬制度ですが、これによって起こったのは弱肉強食の、看護師の奪い合いでした。看護師の数を増やさなければ病院の収入が下がりますから、経済力のある病院は次々と看護師を囲い込み、収益力の弱い病院の業務が成り立たない事態になってしまったのです。

 例えば07年には東京都保健医療公社荏原病院の産科病棟の一つが閉鎖されましたが、原因は看護師の欠員。当時、荏原病院の看護体制は定数316人に対し、欠員が58人ですから、到底、病院機能を維持することはできません。

看護師が多い県トップ5は?

 さらに14年には、千葉県が県内の59病院で合計2517床が稼働していないという衝撃的な発表をしたこともありました。看護師を確保できなければ診療報酬が減額されるため、経営上の問題で病棟を閉鎖せざるを得ない病院が続出したのです。

 しかし、このような看護師不足は全国一律で生じている問題ではありません。

 厚生労働省が定期的に公表している「衛生行政報告例」によれば、20年末現在の就業看護師数は約128万人。人口10万人当たりの就業看護師数は、全国平均が1015.4人です。ところが都道府県別の数字を見てみると、顕著な地域差があることが分かります。

 まず、トップ5をみると、高知県が最も多く、人口10万人当たり1623人。これに1476人の鹿児島県、1404人の佐賀県、1397人の長崎県、1386人の熊本県が続きます(小数点以下は四捨五入)。

 これに対してワースト5は、埼玉県の737人が最も少なく、次いで、千葉県が770人、神奈川県が792人、茨城県が821人、東京都が855人。

 お分かりかと思いますが、健闘しているのは四国・九州勢。一方、首都圏近郊は全く歯が立たない状況です。ちなみにこの順位は准看護師を加えても大きく変動しません。看護師に准看護師を加えた数でも、トップの高知が人口10万人当たりで2070人なのに対し、東京はたった941人。やはり2倍以上の差がついてしまうのです。

 近畿以西で人口10万人当たりの看護師数が全国平均を下回るのは大阪府のみ。一方、中部地方から東では北から宮城、福島、茨城、栃木、埼玉、千葉、東京、神奈川、岐阜、静岡、愛知で平均を割り込み、明らかな「西高東低」がみてとれます。

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