買った犬から「先天性障害が見つかった」とペットショップ「クーアンドリク」を訴えた男性 クーリクは「後天性」と主張、最大の争点は「命の交換契約」
「パテラ」と診断された
後味の悪い引き渡しになったが、Yさんは新たな家族を「クリ」と名付け、しばらくは問題なく一緒に暮らしていた。だが、3カ月ほどしてからクリに異変が生じ始めた。後ろ足を引きずるように“ケンケン”し始めたのである。
「購入から1カ月くらい後、ワクチンを打つため近隣の動物病院を訪れたとき、獣医師から『この子、脚がおかしい』と言われた時の病名を思い出しました」
それは膝蓋骨脱臼、俗に「パテラ」と呼ばれる病名だった。膝についている“お皿”の形状をした骨が正常ではない場所にずれてついてしまっているために、足が脱臼してしまう病である。トイ・プードル、ポメラニアン、チワワ、ヨークシャーテリアなどの小型犬で多く見られ、先天性疾患のケースが多い。
最初に病院で言われた時は、症状が全く見受けられなかったので聞き流してしまったが、慌ててパテラ治療を専門とする動物病院に駆け込んだ。獣医師からは「先天性の両後肢膝蓋骨内方脱臼」と正式に診断され、「生涯に3回から4回の再生手術が必要となる可能性が高い。少なくとも3回は覚悟してください」と宣告された。初回の手術に要する費用は約38万円、サプリメント代や追加の手術費用など将来的にはかかる費用は200万円以上という見積もりも出た。
「交換できます」
この結果を聞いて暗澹たる気持ちになったYさんは、まず店に電話を入れた。すぐに担当者から返ってきたのは「交換なら対応できます」という言葉だった。売買契約書に、
〈引渡し後3ヶ月以内に、当該ペットにペットとしての通常の生活に支障をきたす重大な先天性疾患が発見された場合又は当該先天性疾患が原因で死亡した場合は、甲は乙に対し、生体価格が同程度の代犬猫を提供するものとする〉という条文があるためだ。
このようにクーリクは、客にペットを売り、家族になった後でも異常が見つかれば、代わりの犬と交換させればいいという考えでペット業を営んでいるのだが、Yさんはこれを聞いて腹の底から怒りが湧いてきたと振り返る。
「何を言っているんだと思った。家族なんだから見捨てるわけがないでしょう。交換した後、どうするつもりなんだろうとも思った。殺すつもりじゃないかと」
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