現役組長が子分に破門状を突き付けられた 令和版「仁義なき戦い」はなぜ起きたのか
上納金で生活するトップ
話を今回の破門に戻そう。
「具体的な事情がハッキリとしないのですが、若頭以下、この82歳のトップの振舞いを看過しがたいものととらえてきたとみられています」(同)
トップである以上、組織からの上納金で生活していたはずで、その点も問題視されたのだろうか。
「3代目高木会が豊富な資金を保有していたと聞いたことはありませんから、厳しいシノギの中で、親分を支えきれないという意向が働いた可能性もあるでしょう。ただ、仮にそうであっても穏便に引退を迫るというやり方もあるはず。5代目山口組の渡辺芳則組長はそういう流れで引退しましたね」(同)
渡辺組長の場合、傘下組織組員の警官射殺事件をめぐって、民事訴訟で使用者責任が認定されてしまったものの、5代目に在位しながら無期限静養するという道をいったんは選んだ。が、その後、6代目となる司忍若頭からの「微妙な圧力」があり、後進に道を譲ったというのが定説だ。
“子が親を育てる”DNA
なぜ今回はこういう穏当な進み方にならなかったのか。
「大源会長が引退を迫られたのにゴネたのか、あるいは会長は組織ごと解散しようとしたところ若頭以下が反対して逆に追い出されたのか。昔からテキ屋組織のDNAには“子が親を育てる”という考え方が根付いています。大源会長にもテキ屋の血が流れているなら、“老いては子に従う”のがあるべき姿だったのかもしれません。いずれにせよ揉め事には変わりはないので、地域住民がトラブルなどに巻き込まれないことを願うばかりです」(同)
近年、ヤクザ界では昔なら考えられなかったようなことが起きるのが珍しくない。
毛色は異なるが、最近でいえば、住吉会の会長を名指しした怪文書が出回った一件もその類だろうか。現体制を批判する内容で、おそらくは内輪の権力抗争の一端ではないかと見られている。
7月には愛知県常滑市で若頭が一家の総長を罵倒しながら殴る蹴るという騒動も起きていた(逮捕後、不起訴に)。
しかし、実のところ、「仁義なき戦い」の金子信雄演じる山守組組長もまったく人望の無い親分だった。今日のヤクザ界を見て、千葉真一が演じた大友勝利ならどんなセリフを吐くだろうか。