沖縄もいずれ「中国領」と書かれてしまう? 中国政府発表の新地図でついに「台湾が領土に」

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背景に国内情勢の逼迫が

 今、南シナ海に強く固執するのは、国内情勢が逼迫(ひっぱく)しているせいもあるだろう。中国経済が減速し、若年失業率が高くなり、国民の不満は限界点に達しつつある。しかも「飽食の時代」に慣れた国民の食欲は底なしだ。

 今後も経済発展を支え続けるためにエネルギー資源と水産資源を確保することは喫緊の課題になっている。南シナ海を掌握すれば、今後30年間、国民の胃袋を満たし、国の発展を維持し続けられると、中国では分析されている。

 マラッカ海峡を押さえてシーレーンを統制し、南シナ海の深水域で核搭載潜水艦が自由に活動できれば、「航行の自由作戦」を展開している米国に対抗する強力な手段にもなる。

 9月5日、松野博一官房長官は「2023年版標準地図」について発言し、日本の尖閣諸島が中国の主張に基づき「釣魚島」と表記されているとして中国側に抗議し、即時撤回を求めた。

 これに対して、中国外務省の報道官は翌日の会見で、「釣魚島とその付属島嶼(とうしょ)は中国固有の領土であり、日本の抗議は受け入れない」と反発した。

「うそも百回言えば、真実になる」を実践

 今回発表された新地図の「十段線」の中に、尖閣諸島は含まれていない。それにもかかわらず、頭の中ではすでに中国領だとして譲る気配はみじんもない。

「2023年版標準地図」と銘打ったからには、今後も「24年版」、「25年版」と続くだろう。近い将来、中国が新たに作成する地図には尖閣諸島どころか、沖縄を中国領として発表することも想定しておかなければならない。

「うそも百回言えば、真実になる」――と、よく言われる。

 言い続けることが重要なのだ。100年たてば目撃証人はいなくなり、記録に残された内容だけが歴史の証明になる、というわけだ。

 さて、日本はどうするか。日本政府がしばしば口にする「重大な関心を持って注視する」だけでは済まされない。国際外交のさまざまな場で、繰り返し日本の立場を主張し続け、公式記録に残しておくことが肝要だろう。

譚 ろ美(たんろみ)
作家。東京生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。元慶應義塾大学訪問教授。革命運動に参加し日本へ亡命後、早稲田大学に留学した中国人の父と日本人の母の間に生まれる。『中国共産党を作った13人』『阿片の中国史』『戦争前夜―魯迅、蒋介石の愛した日本』など著書多数。

週刊新潮 2023年9月28日号掲載

特別読物「新地図発表でついに台湾も領土に 沖縄まで迫る『中国の野望』」より

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