沖縄もいずれ「中国領」と書かれてしまう? 中国政府発表の新地図でついに「台湾が領土に」

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台湾が「宙に浮いた存在」に

 国民政府が47年に作った地図でも、「十一段線」は台湾とフィリピン領ルソン島の間にあるバシー海峡に引かれている。第2次世界大戦後、台湾は日本から中国へ返還されていたものの、46年に国共内戦が勃発したことから、地図どころではなくなり、台湾が「宙に浮いた存在」になっていたのではないかと推測される。次いで、毛沢東の「九段線」にも台湾は入っていなかった。つまり中国領だと主張していなかった。

「重大な欠陥」がある地図は、台湾の領有権を主張するうえで、中国政府を大いに悩ませた。

 それが今回の「2023年版標準地図」では、「九段線」を「十段線」としたことで、半世紀以上にわたって頭痛のタネであった「重大な欠陥」を解消したことになったのだから、中国政府はさぞ安堵していることだろう。

「夢の中国」

「2023年版標準地図」には、もうひとつ、中国の歴史観が如実に表れていることが特徴だ。

 私は一昨年、『中国「国恥地図」の謎を解く』(新潮新書)を出版したが、「国恥地図」に示された歴史的な怨念が、新地図にも持ち込まれているのである。

「国恥地図」とは、清朝時代の過去100年間に戦争によって国土を外国に奪われたことを「国の恥」と考えて、「奪われた国土」の範囲を示した地図のことだ。作成されたのは1920年代で、中国をかろうじて統一した蒋介石・国民政府が、政治に無関心な国民に国家の概念を教え、愛国意識を高めさせようと、「愛国主義運動」を展開して大々的な「国恥」教育を行った。

 だが、困ったことに、国民の80%は文字が読めない。そこでそれら国民や子供にも分かるように、清朝時代の版図(はんと)を基準にして赤い線で囲った「古い時代の境界線」と、20年代の中国の領土である「現在の境界線」の二つを地図に描き、失った領土範囲の大きさを示してみせた。

「古い時代の境界線」とは、近代的国家システムでいうところの中国ではなく、広い意味での中国、つまり文化的に中国人が活動していた範囲を指している。大陸続きの辺境の地に住む「藩属」や、南シナ海の「朝貢国」など、中国が直接統治していないが、王朝の権力や威光が及んでいた支配範囲である。つまりグレーゾーンだ。そのグレーゾーンを含めた支配範囲を「古い時代の境界線」として描いた。一方、「現在の境界線」とは、近代国家として国際法に基づく国境線で示された中国の領土範囲である。

 ということは、国恥地図には、中国の人々が思い描いたかつての「夢の中国」と、近代主権国家の「領土」という、時空を超えた二つの概念がねじれた形で結合し、二重構造になっているのである。

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