「あなたは息子ではありません」 逝去の猿翁、香川照之との“和解”は思い込みだった?
〈あなたは息子ではありません〉
一方、二つ目の転機は68年、後に大きな禍根を残すことになった、女優・浜木綿子(ゆうこ・87)との離婚だろう。
「三代目は65年に浜と結婚。長男も生まれたのに、16歳年上の“初恋の相手”で舞踊家の藤間紫(享年85)と不倫の関係になり、出奔するのです。浜とは2年の別居期間を経て正式に別れ、さらには離婚後、長男つまり香川照之(57)とは一切会おうとしなかった」(同)
実際、香川本人も青年時代につづった手記の中で、三代目から以下のように告げられたと明かしている。
〈あなたは息子ではありません。今後、あなたとは二度と会わない〉
その後、香川は映画、ドラマの俳優として成功を収めるも、その屈辱を決して忘れることはなかったのではないか。もっとも、
「香川は2012年に市川中車として、息子の團子(19)とともに澤瀉屋の一門に加わりました。その前年、彼が歌舞伎界入りを発表した際に、三代目が“浜さん、ありがとう。恩讐の彼方に、ありがとう”と会見場で呼び掛けたのは、今でも語り草になっています」(同)
和解は思い込み
三つ目の転機であったはずの和解宣言。しかし、それは隠居後、猿翁を名乗るようになった老父の“思い込み”だったのかもしれない。
先の松竹関係者が語る。
「猿翁は03年ころからパーキンソン症候群を発症しており、だんだん言葉を発するのも難しくなっていきました。一方で、親子関係も好転したとは言い難かった。一時、父親所有の世田谷区の自宅で親子一緒に暮らしたのですが、猿翁の方が息子の言動に耐えられなくなったらしい。猿翁は近年、都内の賃貸マンションに移り住み、古参のスタッフに面倒を見てもらっていたのです」
そして、こう続ける。
「四代目猿之助は自殺ほう助事件で再起不能ですし、澤瀉屋は今、完全に香川の手中にある。彼は猿翁の死に際しても厳しい情報統制を敷いたために、松竹の古参幹部ですら、その死をニュースで知ったと怒っているほど。“不整脈”が原因で、今月13日に亡くなったとしかわからないのです」
週明け18日、冒頭に触れたのとは別の都内寺院に遺体は移され、一門が参加する通夜がひっそりと執り行われたが、葬儀・告別式は親族葬で行われるという。残された全員が“恩讐の彼方に”との心境に至る日は、果たして訪れるか。
[2/2ページ]