「リニア中央新幹線」開業のメリットを台風7号による運転見合わせからひもとくと

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開業はいつか?

 そもそもメリットの点では速度を挙げないわけにはいかないだろう。
 リニア中央新幹線は最高速度が時速500kmと東海道新幹線の時速285kmと比べて1.8倍も速い。車両が浮き上がり、車輪とレールとの摩擦に左右されない結果、大幅なスピードアップが実現したのだ。

 おかげで品川-名古屋間の到達時間は最速で40分と、同じ区間を最速1時間26分で結ぶ「のぞみ」と比べて36分も早く着く。まだ着工になっていない名古屋―大阪間が開業したとして、品川―大阪間の到達時間は1時間07分と発表されている。現在最速の「のぞみ」の2時間14分と比べるとちょうど半分の時間で着いてしまうのだ。

経済効果は大きい

 三菱UFJリサーチ&エンジニアリングの試算によると、リニア中央新幹線の品川-名古屋間が開業したときの経済効果は50年間で少なくとも10兆7000億円にも達するという。

 平均すると年間2140億円、1日5億8630万円の経済効果が得られる計算だ。同社は試算された経済効果の具体的な数値を明らかにしていないが、到達時間の短縮によって移動に要する総合的なコストが低減されると見なして算出している。

 このコスト低減は企業の生産コストの低減に置き換えられ、結果として企業の利潤増大や資本の増強、賃金の上昇に結びつくという。そうなると消費も増大してさらなる生産需要が高まるという経済の好循環が期待できるというのが同社の見立てだ。

 いろいろとメリットを挙げてきたリニア中央新幹線の品川-名古屋間は一体いつ開業するのであろうか。

 当初の予定は2027年とされていたが、静岡県内の区間が着工となっていないのでJR東海も時期を見通せない。南アルプストンネル内の静岡県内の距離は10.7kmで、一度工事を始めたら一気に掘り進められ、ことによると1年程度の短期間で完成するであろう。なぜなら、静岡県はトンネル建設中に大井川の水量が減ることをいま問題としているからで、工事が早く終われば終わるほど影響は少なくなるからだ。これが県にとってもJR東海にとっても望ましいことなのは言うまでもない。

梅原淳(うめはら・じゅん)
1965(昭和40)年生まれ。三井銀行(現・三井住友銀行)、月刊「鉄道ファン」編集部などを経て、2000(平成12)年に鉄道ジャーナリストとしての活動を開始する。著書に『JR貨物の魅力を探る本』(河出書房新社)ほか多数。新聞、テレビ、ラジオなどで鉄道に関する解説、コメントも行い、NHKラジオ第1の「子ども科学電話相談室」では鉄道部門の回答者を務める。

デイリー新潮編集部

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