「リニア中央新幹線」開業のメリットを台風7号による運転見合わせからひもとくと

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そこまで大きくない騒音

 車体が浮上しているメリットとして大地震に強いほか、振動がない、または極めて少ない点も忘れてはならない。

 従来、新幹線では振動も大きな問題となってきた。1両重さ40t程度の車両が時速300kmほどで走行するのだから振動はとても大きい。環境省によって住宅地では70デシベル以下と定められているが、この数値でも地震でいうと震度2に相当するから結構な揺れだ。

 ほかにも振動は深刻な影響をもたらす。大地震ではしばしば新幹線の高架橋が破損して長期間運休になるケースが生じる。コンクリートの橋げたや橋脚を耐震構造とするだけでは限界があり、免震構造も採り入れたいところだが、車両の振動が大きいために導入できないのだ。

 東北新幹線の那須塩原駅と新白河駅との間にある白坂トンネル(長さ2.965km)では車両の振動によって線路に大きな変動が生じた。線路を支えるコンクリート製の路盤も揺れ、その影響で路盤の下の土を削ったために路盤が最大で3.2cm沈下したり、地下水が噴出したりしたからである。これには、コンクリート製の杭を打って路盤を支えるという大手術を施してようやく解決した。

トラブルは考えられない

 しかし、そもそも車両が浮上しているリニア中央新幹線では振動がほぼないので、線路際でも新幹線ほどの揺れに襲われることはない。高架橋を免震構造としてさらに地震に強い構造にすることも可能だし、振動に基づくトンネル内での地下水騒ぎも起きないであろう。

 さて、「リニア」「トンネル」と聞いて勘のよい方は、いま問題となっている静岡県内の区間を思い出したかもしれない。南アルプストンネルの掘削に伴う大井川の水量低下を巡って静岡県がリニア中央新幹線の建設許可をまだ出していないという問題だ。

 詳細を述べると長くなるし、どことなく議論が堂々巡りになっている面もある。一つ言えるのは、南アルプストンネルでは車両は基本的に浮上しているから、車両の振動によって地下水がさらにわき出してしまうといったトラブルはまず考えられないという点だ。筆者としては科学的かつ冷静な議論が行われ、建設が進められることが望ましいと考える。

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