「リニア中央新幹線」開業のメリットを台風7号による運転見合わせからひもとくと
東海道新幹線はなぜ雨に弱いのですか
2023年8月15日に台風7号が本州に上陸し、各地で列車の運転見合わせが相次いだ。特に東海道・山陽新幹線では名古屋駅と岡山駅との間で事前に列車の運休が告知される計画運休となり、終日にわたって列車は1本も運転されず、利用者らに大きな影響を与えた。この一件は、リニア中央新幹線の意味を考える良い機会ではないか、と鉄道ジャーナリスト・梅原淳氏は指摘する。
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【写真】牧歌的な風景とはまるで対照的。シェルターで覆われた山梨実験線の線路など
台風7号の影響がようやく収まった翌8月16日午前、静岡県の一部に線状降水帯が発生して猛烈な雨に見舞われる。この影響で東海道新幹線は三島駅と静岡駅との間で午前8時30分から約6時間にわたって列車の運転は見合わせとなり、運転再開後も列車は最大で10時間近く遅れてしまう。
折しもピークを迎えようとしていたUターン客にとっては何とも恨めしい雨で、合わせて約30万5000人に影響が出たとのことだ。東海道新幹線で混乱に陥っている最中、筆者はテレビ番組で解説やコメントを行っていた。番組のスタッフから寄せられる質問はほぼ同じで、「東海道新幹線はなぜ雨に弱いのですか」だった。
土の構造物に線路が敷かれた区間が過半数
1959年4月着工で1964年10月1日開業の東海道新幹線は土を積み上げた盛土(もりど)、または山の斜面を切り取った切取(きりとり)といった土の構造物に線路が敷かれた区間が過半数を占める。
東京―新大阪間の実際の長さである515.4km中、盛土は229.6km、切取は44.6kmの計274.2kmに達し、その割合は53.2%だ。土の構造物が多いのは、トンネルや橋を作る必要はないと建設を担当した国鉄が考えたからで、別におかしな話ではない。
特に、市街地でもないのにわざわざ建設費のかさむ高架橋としなかったのも納得がゆく。ところが、東海道新幹線が開業すると今回のような大雨で盛土や切取部分の斜面が崩れる事象が頻発してしまう。
国鉄やJR東海は盛土や切取周辺の斜面への補強を実施したが、限度がある。東海道新幹線での苦い経験をもとに、その後建設された新幹線では雨に強いコンクリート製の構造物、つまり高架橋を増やしたのだ。筆者の話に戻って、テレビ番組のスタッフは続いて次のような質問を投げかけた。
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