「クソ日本人」と連呼…迷惑系動画で逮捕された“ソマリア海賊”の男が日本に目を付けた特別な事情
日本人差別が根底
「特にアメリカでは、歴としたプロが作成したバラエティ番組でも、ドッキリ企画が人気です。そのためYouTubeでは、昔から素人が作るドッキリ動画が支持を集めており、クラッカーを鳴らして見ず知らずの歩行者を脅かしたり、人が集まる繁華街で“メントスコーラ”を実演して反応を見たりといった投稿が相次ぎました。また2014年には“アイス・バケツ・チャレンジ”が人気となりましたが、こうした“無謀な振る舞い”は再生回数を増やすことが立証され、迷惑系動画の配信者が参考にしたのです」(同・井上氏)
2021年には空手選手になりすましたドイツ人が東京五輪の選手村に不法侵入。食堂やトレーニングルームなどの動画を投稿して注目と批判を集めた。
今年5月には当時18歳のイギリス人ティックトッカーが、ロンドンにある一軒家に無断侵入。住人の中年夫婦が驚く様子を撮影した動画を投稿して話題を集めた。もちろん炎上し、現地の一部メディアは「容疑者は逮捕・起訴された」と報じたが、カリド容疑者の生配信と類似していることは言うまでもない。
「日本だけでなく欧米にも迷惑系動画配信者は存在します。とはいえ、向こうで配信を続けるのは命がけでしょう。それこそ、不法侵入したら銃で撃ち殺される可能性もあります。Kickはカリド容疑者の動画を削除しており、どのような経緯で日本に目をつけたのか検証できなくなりました。しかし日本は極めて治安のいい国ですから、ケガや死亡のリスクは大幅に減ります。さらに、海外には日本人に対する差別意識を持っている人も少なくないため、カリド容疑者の生配信が人気を集めたのではないでしょうか」(同・井上氏)
一罰百戒のメッセージ
日本人の多くは、英語が理解できない。ひどいことをされても、反撃しようとさえしない。こんな愚かな連中は、嘲笑するに限る──これこそカリド容疑者が配信した動画の根底にある思想だという。
「一種の逆張りだと考えられます。今、日本は外国人観光客に人気が高く、多くの動画がアップされています。東京や大阪、京都という定番の観光地の映像では注目を集めることが難しくなり、今は地方都市を『こんな素晴らしい場所があった』と紹介するのがブームになっているほどです。『日本人は礼儀正しく、街は清潔で、こんなに素晴らしい国はない』という見解が主流を占める中、カリド容疑者は『日本人は臆病でマヌケなチキンばかり』と差別感情丸出しの動画を配信し、ニッチな世界でスターになったわけです」(同・井上氏)
昨今の円安によって、日本を訪れる外国人の旅費も滞在費も下がっており、さらなる“迷惑系”が来日する可能性はないのだろうか。
「もちろん可能性はあります。とはいえ、欧米人にとって日本は依然として遠い国です。迷惑系の動画配信者は年齢層が比較的若く、基本的に金銭の余裕がありません。円安でも距離が遠いので、それなりの旅費がかかります。結果、欧米の観光客はある程度のふるいがかけられていおり、カリド容疑者のように非常識な人間が来日することは今後もレアケースなのではないでしょうか。さらに、大阪府警が逮捕に踏み切ったことも、いわゆる“一罰百戒”のメッセージを発信できたと思います」(同・井上氏)