“秋の味覚”の落とし穴「毒キノコで食中毒」はナゼなくならないのか? 「直売所」や「無人販売所」にも注意が必要な理由

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農産物直売所で毒キノコを販売

 秋の味覚の王様と言えばキノコである。行楽で道の駅や農産物直売所に行くと、その土地でしか入手できない天然キノコがたくさん並び、目を奪われる。天然キノコはスーパーに並ぶ栽培ものとは異なる独特の風味があるため、熱心なファンも少なくないようだ。

 しかし、こうした天然キノコの中に毒キノコが混じっていたとしたら、どうだろう。今年9月、農産物直売所で毒キノコが誤って販売される事件が起こった。そのうちの一種はテングタケで、食べると嘔吐や下痢などの症状に見舞われる有名な毒キノコである。

 秋のキノコ狩りシーズンになると、各地の保健所が毒キノコに注意するよう呼び掛けているし、キノコ研究者や愛好家による地道な啓発活動や勉強会も行われている。にもかかわらず、きのこ中毒は毎年のように発生しているし、ときには死亡事故も起こっている。

 そもそも、キノコ中毒はなぜ起こるのだろうか。最も多い事例は、野山に生えている毒キノコを食用だと思い込んで採取し、調理して食べ、中毒になるケースである。この場合、多くは「食べられそうな見た目だと思った」「食用のヒラタケだと思って(毒があるツキヨタケを)採ってしまった」などのパターンがある。

 一方で見逃せないのが、先に触れたような、農産物直売所で誤って販売された毒キノコを食べて、食中毒を起こす事件なのだ。実はこの事例、発覚したものは氷山の一角で、実は相当数発生しているのではないかと筆者は考えている。

仕入れは“キノコ採りの名人”頼み

 実は、2020年にも、秋田県・田沢湖の農産物直売所で、毒キノコのクサウラベニタケが販売され、3人が食中毒を起こしている。同様の事故が繰り返し起こってしまう原因を一言で言えば、天然キノコの仕入れが地元の“キノコ採り名人”の長年の経験頼みになっているからである。筆者の知人で、秋田の農産物直売所のスタッフA氏はこう語る。

「店頭では、名人が採ってきたキノコを基本的にそのまま並べています。というのも、我々スタッフもキノコは詳しくはわからないからです。もちろん見分け方などの知識はありません。だから検品などはしていませんし、できないのが現状です」

 直売所にキノコを持ち込むキノコ採り名人は基本的に独学である。しかし、ツキヨタケ、カキシメジ、クサウラベニタケなど、名人でも判別が難しいとされるものは数多くある。特にクサウラベニタケは食用キノコのホンシメジなどと交じって生えていることもあるため、誤って採取しやすい。

 同じことは山菜にも言える。直売所や道の駅のスタッフは山菜を見分ける知識も乏しいため、検品できない。しかし、山菜に似た毒草は少なくない。食用のシドケと間違って猛毒のトリカブトを採取してしまったり、食用のニラと毒草のスイセンを誤食するなどの事故はたびたび発生している。

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