「らんまん」は朝ドラの王道ではなかった 槙野万太郎が果たした役割に重要な意味
神木隆之介(30)主演のNHK連続テレビ小説「らんまん」が好評のうちに幕を閉じる。最近の視聴率も個人10%弱(世帯17%以上)と高水準を推移。「らんまん」は何を描き、なぜ視聴者を惹き付けたのか。
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万太郎は座標軸だった
朝ドラの王道はヒロインの成長物語。だが、「らんまん」は違った。植物学者・牧野富太郎博士をモデルにした主人公の槙野万太郎(神木隆之介)は、ずっと変わらなかった。だからこそ、万太郎はこの群像劇における座標軸の役割を果たせた。
万太郎は幼いころから一途に植物を愛し続け、出世や名声には目もくれなかった。植物以外で執着したのは寿恵子(浜辺美波、23)との結婚くらい(64話)。趣味すらなかった。
ともすれば面白みに欠ける人物だったが、その分、周囲の人物を万太郎の引き立て役で終わらせなかった。登場時間の長短こそあったものの、出てくる人物すべての生き方から人間性まで描かれた。
牧野博士は「雑草という名の草はない」という名言を遺した。脚本を書いた長田育恵氏(46)はこの言葉を強く意識したのではないか。脇役、端役と言われてしまいそうな人物をつくらなかった。「らんまん」は幕末から昭和を懸命に生きた人々の物語だった。
井上竹雄(志尊淳、28)は好きな人に尽くすことを生きがいにした。父親の市蔵(小松利昌、50)が万太郎の生家の造り酒屋「峰屋」の番頭だったので、当初は忠義心から4歳年下の万太郎を守り始めたが、それは間もなく慈しみの心に変わる。
万太郎の“助走期間”を支えた竹雄
竹雄は万太郎が植物の研究をするために上京すると、世話を焼くために自分も同行。一緒に根津の十徳長屋に住んだ(27話)。さらに2人の生活費を補うため、神田の西洋料理店「薫風亭」で働き始める(34話)。遊ぶ間もなかったが、それに不満を抱く素振りもなかった。
「若(万太郎)のええところは、ニコニコしているところです。若が笑うと、みんな笑顔になる」(竹雄、48話)
いつの時代にも好きな人に献身することに喜びを感じる人がいる。万太郎が植物学者になるための助走期間は竹雄が懸命に支えた。
竹雄は万太郎の姉・綾(佐久間由衣、28)と結ばれる(65話)。子供のころから憧れていた女性だ。すると今度は綾に尽くす。「峰屋」が腐造を出し、廃業に追い込まれ、蔵元の綾が茫然自失となると、懸命に支えた(89話)。その後、竹雄は綾と上京。2人で屋台を引く。綾の夢をかなえるための資金稼ぎだった(112話)
綾の夢はもう一度、日本酒を造ること。その実現を手伝ったのが万太郎の親友・藤丸次郎(前原瑞樹、30)である。
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