処理水放出で“地球のご冥福を祈ります”…「49歳有名歌手」の振る舞いに韓国人がショックを受けたのはなぜか

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「食べるくらいなら青酸カリを飲む」BSE問題でも芸能人が“扇動”

 2008年の李明博(イ・ミョンバク)政権時代、よく似た事態があった。BSE(狂牛病)が騒がれた時である。政府がアメリカ産牛肉の輸入を決定すると、全国的な議論が起きた。アメリカ産の牛肉によって「狂牛病」に感染するおそれがあるという話をマスコミと左翼政党が広げたからだ。政治家や市民団体だけでなく、一般人、さらには幼い子供まで不安を募らせた。ソウルの光化門(クァンファムン)の通りでアメリカ産牛肉輸入を反対するデモが連日開催され、李明博政権の支持率下落という影響を及ぼした。

 輸入反対運動に油を注いだのが芸能人の発言だった。女優のキム・ギュリ(44)は、「狂牛病の牛肉を食べるくらいなら青酸カリを飲む」と公然といい放って話題になった。他の芸能人もキム・ギュリ発言に追従するように、アメリア産牛肉の輸入に反対する立場を明らかにしたため、若い人たちは動揺してしまったのだ。

 その後、キム・ギュリは、露骨に文在寅(ムン・ジェイン)大統領を支持し、文政権で恩恵を受け、活動の機会を広げていった。後に、世間に流れた狂牛病感染の話には捏造された内容がかなりあることが明らかになったが、世論に浸透してしまった狂牛病への不安は変わらず、結局、李明博政権は低迷した支持率を挽回できなかった。

 福島第一原発の処理水の放出をめぐる現況は、この時とよく似ている。政府が「科学的にまったく問題がない」といくら叫んでも、左翼政党と彼らを支持する国民には「馬の耳に念仏」だ。そして芸能人が世論を煽動する。左翼支持者たちは、今回のキム・ユナの発言を、キム・ギュリの「青酸カリ」発言と同じように利用しているのかもしれない。

「福島の海水、飲めるんでしょ?」

 しかし、左翼陣営の描くように事態は動いていないことはせめてもの救いだ。与党も過去の狂牛病騒動から学習したのか、芸能人の口からデマが広がることを警戒している。党代表まで乗り出して「キム・ユナ論議」に断固として対処した。その後の動向を見ると、与党の対応は一定の効果を生んでいる。

 そのためだろうか。福島処理水の放出について、キム・ユナに続く芸能人は見あたらない。20年ほど前まで人気を博したソロ女性歌手、リアぐらいだろうか。

 彼女は日本が処理水を放出するという情報が流れていた7月9日に福島へ出向いた。福島原発から1.2キロ離れた海域から直接すくいあげた海水を手に在韓日本大使館へ。そこで、「福島の海水、飲めるんでしょ?」と手渡そうとして警察に止められている。

 彼女はすでに自身が左翼政党支持者であることを明らかにしている。芸能活動もほとんどしていない。人々への影響力はキム・ユナと比べると小さい。むしろ彼女の行動に対し、「彼女が福島原発周辺の海へ行き、防護具もなく潜水して無事だった。福島の海が安全だということを自ら証明したようなもの」という人すらいた。

ノ・ミンハ(現地ジャーナリスト)

デイリー新潮編集部

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