デーブ・スペクターがじっくり語る「ジャニーズ問題」 「正義感の群集心理は今でも気味が悪い」、「米国型システム導入は絶対無理」
“ネット裁判所”の威力
会見の結果、“ネット世論”は「ジャニーズ事務所は反省の色がなく、抜本的な改革に乗り出す気がない」と判断した。デーブ氏は「ネット上の“オピニオンリーダー”とも言える著名人の発言も大きな影響を与えたはずです」と指摘する。
「具体的には、堀江貴文さん、『ひろゆき』こと西村博之さん、そして成田悠輔さんの3人になります。全員がSNSやテレビ番組などで、ジャニーズ事務所の姿勢を強く批判し、世論の流れを決定づけました。『ジャニーズ帝国』の異名は様々なニュアンスを含んでいますが、テレビや新聞、出版といったメディアに強い影響力を持つという意味もあります。ところが、“世論誘導”を得意としていたはずのジャニーズでも、“世間裁判所”もしくは“ネット裁判所”の持つ圧倒的なパワーを読み誤ったのです」
デーブ氏によると“ネット裁判所”が猛威を振るっているのは海外でも同じだという。折しもイギリスやアメリカでは、コメディアンのラッセル・ブランド(48)に性的暴行疑惑が浮上し、世論が沸騰している。彼は人気アーティストであるケイティ・ペリー(38)の元夫としても知られる。
「ジャニーズの問題では、ジャニー喜多川氏が他界しているため、本人の刑事・民事責任を問えません。ところが、ブランドさんの場合、すでにロンドン警視庁が捜査を開始しています。本来なら推定無罪を適用すべき段階ですが、イギリスのSNSや新聞などのメディア上では“ネット裁判所”がフル活動し、大半の投稿がブランドさんを犯人と決めつけ、激しく批判しています。エンターテイメント業界は今後ますます、SNSにおける“世論”を重視せざるを得なくなるでしょう」
東山新社長の問題点
もしジャニーズ事務所に危機管理の意識があったなら、会見で社名変更を真っ先に発表したに違いない。他にも「抜本的な改革を行います」と強いメッセージを発するチャンスはいくらでもあった。デーブ氏は「例えば、新社長を誰にするかという問題です」と言う。
「私も最初は『東山さんの新社長は妥当だろう』と思っていました。芸能界は特殊な世界ですから、経験者でないと経営指揮が難しいのです。さらに、日本では従業員も生え抜きの経営者を歓迎します。外部から“プロ経営者”を招聘しても、失敗に終わるケースは珍しくありません。しかし、会見から日が経つにつれ、『外部から新社長を招いたほうがよかった』という意見も一理あると考えるようになりました」
抜本的にベストの選択は「テレビ、音楽、映画、出版といった、芸能界と距離の近い業界の実力者に白羽の矢を立て、任期限定でジャニーズの立て直しを委ねる」だという。しかし、理想的ではあるが実現性に乏しい。そもそも引き受ける人がいるのかという問題もある。
「現実的な話をすれば、なぜ特別チームのメンバーに経営参加を依頼しなかったのかという疑問があります。当初、特別チームは『第三者委員会の体を成していない』など、ジャニーズを守る側の組織ではないかと疑われていました。ところが、徹底的な調査を行い、性加害の全貌を明らかにしたのです。これほどの業績を残し評価を高めた特別チームを経営監視委員会に改組、東山新社長をサポートすると発表したら、批判の声は減ったのではないでしょうか」
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