スパイ摘発の協力者に最高1000万円 経済政策に行き詰った中国政府は先祖返りするしかない
スパイは「歩く50万元」…流行する不気味なキーワード
経済対策に行き詰まった中国政府はこのところ、思想や行動に対する「引き締め」の強化に走っている感が強い。
国家の安全を重視する中国政府は7月1日、スパイ行為を取り締まる改正「反スパイ法」を施行したが、中国のネット上では「行走的50万(歩く50万元)」という不気味なキーワードが流行している。中国で潜伏しているスパイを指す用語だ。
スパイ行為の防止又はスパイ事件摘発に重大な役割を果たした人に対して、最高50万元(約1000万円)の賞金が中国政府から与えられることから、スパイは歩く50万元というわけだ。
中国政府は「歩く50万元」発見運動を全国に広げることに躍起になっている。家族間の相互告発も奨励していることから、人々は「再び文化大革命のような悪夢が再現するのではないか」と恐れている(9月22日付ニューズウィーク日本版)。
9月に入り、中国政府が「国民の感情を傷つける」服装の禁止を盛り込んだ法案を公表したことにも疑念の声が広がっている。
どのような服装が対象になるかが明記されていないからだが、中国国内では「歴史的に重要な場所や記念日に和服を着る人への取り締まりが主な目的だ」との受け止めが一般的だ(9月22日付AFP)。「日本アニメのコスプレもターゲットになる可能性がある」と報ずる香港メディアもあり、水産物の次はこの問題が日中間の懸案になってしまうのかもしれない。
政府は生き残りをかけてレーニンの基本原則に立ち戻る
だが、中国政府の引き締めはとどまることを知らないのではないだろうか。
長期不況に陥りつつある中国経済の「日本化」はよく指摘される。だが、中国の政治経済制度に詳しい呉軍華氏(日本総合研究所上席理事)は「中国で『ソ連化』が進むかどうかに注目すべき」と主張している(9月22日付日本経済新聞)。
呉氏によれば、中国の改革開放のルーツは、ウラジーミル・レーニンがロシア・ソビエト社会主義共和国の指導者だった1921年3月に始めた新経済政策「NEP(ネップ)」にあると言える。ロシア内戦後の経済危機に対応するため、戦時共産主義を転換して一部に資本主義的手法を取り入れた政策だ。ただし、政治や文化などでは社会主義の維持が原則であり、ソビエト連邦(旧ソ連)はこの政策が施行中だった1922年12月に建国されている。
「中国版ネップ」は本家とは比べものにならないほどの大成功を収めたが、中国政府はレーニンが掲げた原則を今も堅持しているという。
長年続いた高度成長による“深刻な副作用”が吹き出している現在、中国政府は生き残りをかけてレーニンの基本原則に立ち戻るしかないだろう。なりふり構わず、中国共産党の政権維持に終始することになったとしてもなんら不思議ではない状況だ。
中国政府がソ連化(先祖返り)するのは、時間の問題ではないだろうか。
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