「工藤會」2トップの控訴審の行方、新体制となった組織の今後
逮捕から9年
特定危険指定暴力団・工藤會(本部・北九州市)の野村悟総裁(76)が福岡地裁で死刑判決を受けてから約2年。9月13日から福岡高裁で控訴審がスタートした。弁護団を解任して新体制で臨む被告側が、狙っているのは「逆転」――死刑判決の回避だ。そのためナンバー2で無期懲役の判決を受けた田上不美夫(67)会長は、一部の事件については田上会長自身の独断で指示を下したという主張へと方針転換した。27日には両名への被告人質問が予定されている。そんな中、工藤會内の序列にも変更があったという。
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「野村総裁の逮捕は2014年9月で、それから9年が経過しました。警察・検察・国税が三位一体となって組織の弱体化を図り、県内に本部を置く工藤會の構成員は右肩下がりに減ってきてはいます。が、一方で、関東や関西での活発な動きも報告され、警察としては壊滅に向けてさらに注力していくという考えでしょう」
と、担当記者。
暫定トップの横顔
工藤會の主要な傘下組織で、野村総裁の出身組織でもある田中組はとりわけ捜査当局のターゲットとなり、3代目組長の野村総裁は一審で死刑、4代目組長の田上会長は同じく無期懲役、そして5代目組長の菊池啓吾理事長も同じく無期懲役判決を受けている。
全盛期は100名を超えていた構成員も現在は20名ほどとなっているという。そんな中、工藤會は人事を断行した。
「6代目田中組の後藤靖組長を工藤會の暫定トップに据える人事です。後藤組長は工藤會の2次団体・草野一家傘下の大東亜会の出身で、野村総裁の家族からの信頼も篤いと聞きました。控訴審を直前にしたタイミングで、野村・田上両名の出身母体である田中組の組長が暫定とはいえトップに就くあたり、全力で控訴審をサポートしていくぞとの思いを込めたという印象がありますね」
と、竹垣悟氏(元山口組系義竜会会長で、現在はNPO法人「五仁會」を主宰)。
「田中組の6代目については、西田智明組長代行(当時)が有力候補との声もあったようです」(同)
1審判決を覆すのは
裁判に話を戻そう。野村・田上の2トップが起訴されたのは、1998年の元漁協組合長の射殺、2012年の福岡県警の元警部銃撃、2013年の看護師刺傷、そして2014年の元漁協組合長の孫の歯科医刺傷の4事件。1審では、両被告が関与を全面否認していたが、控訴審では、看護師刺傷と歯科医刺傷の2つについて、殺意は否定しつつも田上会長側が独断で判断したと主張を一転させた。
1審から一新された弁護側は、この主張を補強するため新たな証拠に加えて30名以上の証人尋問を請求したが、高裁の判断は「証人1人」の採用だった。控訴審の見通しは「被告側の狙い通りに1審判決を覆すのは困難だと見られています」(先の記者)とのこと。仮にそのように進んでいくのであれば今後の工藤會が組織としてどのようにサバイブして行くのかに焦点が集まることになりそうだ。
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