なぜネズミは太らない? コカインより依存度が高い「砂糖中毒」… 科学的な食欲抑制術をプロが解説!

ドクター新潮 ライフ

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砂糖や脂肪はコカインよりも…

 さて、人間特有とでも言うべき快楽性の食欲には、「報酬系」と呼ばれる脳内システムが関与しています。性行動や摂食行動で快感を覚えると、報酬系が刺激され、同じ行動を繰り返すように誘導するのです。

 そして、カロリーの高い砂糖などの甘味物質や脂肪が、報酬系を強く活性化させることが分かっています。つまり、甘いものや脂っこいものを食べると報酬系が活性化し、快楽性の食欲が高まる。甘いものや脂っこいもの。そう、それは肥満を招く食べ物です。さらに厄介なことに、甘味や脂肪は時に依存状態を生み出します。

 ネズミの実験では、コカインへの依存状態を作り出した上でコカインを断つと、3日程度でコカインを渇望する依存状態は消失します。ところが、砂糖と脂肪が豊富に含まれたエサを与え続けて依存状態にし、その後に砂糖と脂肪を断つと、2週間経過しても依存状態にほとんど変化はありませんでした。砂糖や脂肪は、コカインよりも高い依存効果を示したのです。

 甘いものや脂肪の多いものを食べて太ると、なかなか痩せられない人が多いと思います。麻薬の依存状態から抜け出すのが至難の業であることを考えると、「砂糖中毒」「脂肪中毒」から脱却できず、痩せるのに苦労するのもうなずける話ではないでしょうか。

満腹感が得やすくなる

 その上で、私たち現代人は果たしてどうやって食欲をコントロールし、肥満対策を行えばいいのでしょうか。

 まず、「GLP-1」というホルモンが神経に働きかけ、食欲を抑制することが分かっています。米国では、肥満治療としてGLP-1の注射も行われています。日本ではまだ保険適用されていないため、個人輸入する人がいますが、嘔吐(おうと)や低血糖の副作用があることから注意が必要です。

 しかし、注射や薬に頼らなくても、GLP-1は私たちが体内で自ら作り出しているものなので、その分泌を促せれば食欲の抑制は可能です。GLP-1の分泌は、タンパク質や脂質を取ることで促進されます。また、GLP-1はインスリンの分泌を促し、血糖値を下げます。そこで大事になってくるのが食べる順番です。

 具体的には、はじめにタンパク質が豊富な豆類や、タンパク質とともに脂質を含んだ肉類を食べる。そうするとGLP-1が分泌され、食欲が抑制されて満腹感が得やすくなるのです。結果的に、ご飯などの炭水化物の摂取量も抑えられるのと同時に、糖質摂取による血糖値上昇を防ぐ効果も期待できます。

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