なぜネズミは太らない? コカインより依存度が高い「砂糖中毒」… 科学的な食欲抑制術をプロが解説!

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 実りの秋を迎えようとしている。旬の魚に野菜に果物、私たちの前に“誘惑”が多く現れる。そして、つい食べすぎてしまう。その結果、太る……。人間の本能である食欲は、どうすれば抑えられるのか。科学に基づいた食欲抑制術と肥満対策をプロが伝授する。【新谷隆史/サイバー大学客員教授】

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 ネズミは太りません。

 いつでもエサを摂取できる飼育箱の中に入れても、毎日同じ量のエサを食べたら満腹感を覚えてそれ以上は食べない。体内のエネルギーが減少し、それを補うべく食欲が発動するものの、十分なエネルギーを補給できればそこで食欲は収まる。だから太らないのです。これを「恒常性の食欲」と言います。

 人間は太ります。

 恒常性の食欲が満たされても、「心の空腹感」を満たそうとして、なお食べ続けようとするからです。例えば、「別腹」と言いつつ食後にケーキなどを食べて精神的な刺激を得ようとする。こうして食べすぎて太る。これを「快楽性の食欲」と言います。なぜ人間は快楽性の食欲に影響されてしまうのでしょうか。それは、人間が人間たる所以(ゆえん)と大きく関係しているといえます。

快楽性の食欲

〈こう解説するのは、神経生物学を専門に研究を続けている新谷隆史氏だ。

 2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典氏が、受賞対象となったオートファジーについて研究していたことで知られる「基礎生物学研究所(基生研)」。新谷氏はその基生研の准教授や東京工業大学の特任准教授として、食欲の制御機構や視覚神経回路の形成機構の解明などに取り組み続けてきた、食欲と肥満の研究のプロである。

 間もなく「食欲の秋」を迎える。それはすなわち、食べすぎによる「肥満の季節」でもある。私たちはなぜ太り、どうすれば肥満を防げるのか――。

『一度太るとなぜ痩せにくい? 食欲と肥満の科学』の著書があり、現在、サイバー大学の客員教授を務める新谷氏が続ける。〉

 言わずもがな、人間の特徴は他の動物に比べて脳が格段に発達している点にあります。とりわけ、運動・言語・感情を司る前頭葉が発達したために、心の空腹感を覚え、快楽性の食欲が働いて食べすぎてしまうのです。特に現代社会は、おいしいものに満ち溢れ、快楽性の食欲が常に刺激されている状態といえます。つまり、「肥満」は「現代を生きる私たち人間の問題」といえるわけです。

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