“国営漫画喫茶”批判で一度は頓挫も…漫画界の巨匠「里中満智子」が訴える「あまねくすべての漫画家の原画を保存したい」

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マスコミの攻撃で一転、悪者に

――里中先生のお話を聞くと、本当に素晴らしい提言だと思います。しかし、当時の世間の風当たりは強かったと記憶しています。民主党幹事長だった鳩山由紀夫氏は国会で麻生総理に向かって「アニメの殿堂」と発言し、マスコミも同調しました。

里中:計画を急きょ策定したものですから、文化庁が描いた青写真が世間から気に入っていただけなかったようです。民主党政権からは叩かれ、マスコミによって誤った情報が世間に出回りました。ちなみに、私は民主党に少しでも話を聞いてくださいと申し出たのですが、党員は誰一人として話を聞いてくれなかったんですよ。

――マスコミも「アニメの殿堂」「国営漫画喫茶」だと盛んに喧伝しました。政争のネタに使われた感が否めません。

里中:麻生政権批判の格好の材料として利用され、計画が潰れればいいという感じに世論も誘導されてしまったと感じます。テレビ局の取材に対して、「アニメの殿堂ではありません」と話をしたら、「世間的にはアニメの殿堂と言った方がわかりやすいので、そう説明します」と言われてしまいました。

世間の風向きは変わったのか

――国立メディア芸術総合センターの計画が白紙になってから、漫画やアニメを振興しようという動きは政府内にあったのでしょうか。

里中:白紙になった後、計画を惜しむ声は多数聞きました。国会議員の先生方からは、海外でこれだけ日本の漫画が受けているから、国として何かやったほうがいいとたびたび言われました。しかし、一度流れた企画を復活させるのは難しいんですね。しばらくして、2014年に超党派のマンガ議連(マンガ・アニメ・ゲームに関する議員連盟)ができました。麻生元総理が最高顧問をやっておられます。設立以来、地道に活動を続けています。

――年月が経ち、世間や政治家の漫画に対する見方も大きく変わったように思います。里中先生が今改めて、原画の保存の重要さを訴えるのはなぜでしょうか。

里中:先ほどお話したように、後世の人たちにしっかりと漫画を見ていただくためには、原稿が劣化しないうちに適切に保存し、アーカイブ化することが不可欠です。また、保存するための箱をつくればそれでいいわけではなく、著作権者の了解のもとで収蔵品を活用することも大切です。私は特に、1960~70年代の原画が心配なんですよ。漫画家が亡くなった後、遺族が不用のものとして、捨ててしまった話を何回も聞いていますから。

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