イタリアに行くと「日本は超貧乏国」と痛感… 豊かになるために転換するしかない“政策”は
円安をキープした異次元緩和策の大罪
この20年のあいだにどんな経済政策が行われたかといえば、最大のものはいうまでもなく、2012年12月に発足した第2次安倍晋三内閣がデフレ脱却を目的に掲げた経済政策だった。すなわち、大胆な「金融政策」、機動的な「財政政策」、民間投資を喚起する「成長戦略」という「3本の矢」を掲げたアベノミクスである。
とはいっても、現実には成長戦略はうまく講じられず、財政赤字が拡大し続けるなかでは財政政策も困難だった。このため唯一、金融政策が突出することになった。2013年3月に就任した日本銀行の黒田東彦総裁が、異次元の金融緩和政策を打ち出し、今年4月に退任するまでこの緩和策を堅持した。
その結果、どうなったか。円は1ドル=80円程度だったのが急下降し、いまでは140円台をつけている。その結果、輸出産業の利益は大幅に増し、株価も上昇。8,600円だった日経平均がいまや3万円を超えているのは、周知のとおりである。
では、それでよかったのかといえば、とんでもない。異次元緩和によって引き起こされた円安で、企業は濡れ手で粟の利益を得たが、ふつうは日本の輸出が増えれば円高に反転して、輸出企業は利益を上げにくくなる。そこで生産性を引き上げるために、技術革新が重ねられる。日本企業はこれまで、こうして困難を乗り越えては生産性を高めてきた。
ところが、黙っていてもゼロ金利政策のおかげで円安が維持されるので、輸出企業はあぐらをかいた。だから賃金も上がらない。そのうえ円安だから、諸外国にくらべて日本人の購買力は低くなる一方だった。
それでも日本が自給自足できる国なら、諸外国より賃金が低くても影響は少なくて済むだろう。だが、たとえば食料自給率はどうか。農林水産省が公表している2020年のデータによれば、カロリーベースでカナダ221%、オーストラリア173%、アメリカ115%、フランス117%、ドイツ84%、イギリス54%、イタリア58%、スイス49%に対し、日本はわずか38%。先進国(もはや日本が先進国であるか疑わしいが)のなかで、群を抜いて低い水準なのだ。
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