【袴田事件再審】同級生が証言する巖さんの少年時代 「逮捕されたのを知って仰天した。あんな温厚な男が…」

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「巖が無実だから頑張れます」

 会見でジャーナリストの神保哲郎氏は「勝てるわけがない検察が有罪立証することの意図は?」と尋ねた。

 小川氏は「2つある」とし、「1つは、有罪が無理でも、捏造だけは認めさせたくない。捏造を否定するための新証拠を出そうとする。もう1つは、嫌な話ですが、時間を稼いで巖さんやひで子さんが倒れ、皆さんが関心を持たなくなっていくのを待っているのでは」と話した。

 神保氏に「ここまで戦ってこられた力の源は?」と訊かれたひで子さんは「私は巖は無実だと思っています。無実だから頑張れました」ときっぱり語った。気合を入れて答えたのがちょっと恥ずかしかったのか、隣の小川氏を見てくすりと笑った。

 ドイツの記者は「弟さんは釈放後、社会に対してどう思っているのか? どういうことを話すのか?」など、最近の巖さんの心情を尋ねた。

 ひで子さんは「妄想の世界にいる巖は『裁判は終わった』と言っているので、裁判の話はしません。寡黙な男で、必要以上の会話もしません。今日も東京に行くとだけ言って出てきました」と明かした。

 近況については「最近は(支援者の運転で)ドライブしています。浜名湖とか育った岩水寺なんかに行きますが、この頃は清水や富士に行きたいと言っています。巖も歳を取ったのか、あまり歩かなくなって、自宅の4階までの階段をふうふう言いなら上がっていますが、それが運動だと思っているようです。医者に診てもらっていますが、血糖値が高いこと以外は問題はなく、元気です」と言う。事件があった清水に行きたがっているというのは意外だった。

 最後に司会の西村氏に「無罪になって、それを巖さんが理解して、妄想が解けるということはあるのでしょうか?」と訊かれたひで子さんは、「そう願っております」と答えた。

 神保氏は質問の中で「捜査機関の捏造という意味で、これまでの冤罪事件とは別次元の冤罪」と語っていたが、至言である。これこそが「袴田事件」である。捏造に加わった関係者は全員が鬼籍に入ったとは限らない。筆者には真犯人を追う力はないが、若いジャーナリストなどに真相究明を頑張ってもらいたい。権力の巨悪を追及するのに時効などない。

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