強制捜査直前に秘書が“証拠隠滅”、議員の後援会名簿を盗んだことも… 再エネ汚職の秋本真利容疑者の知られざる過去
河野氏との信頼関係
「直近まで河野さんの勉強会『火曜会』の事務局長を務めていましたからね」
とは、さる自民党の若手議員。
「『火曜会』は火曜の昼に党本部で会合を開いていて、カレーを食べながら、ゲストスピーカーや河野さん自身の話を聞く、中堅若手議員の勉強会です。幹部は河野さんを含めた4人で、そのうち秋本さんは事務局長として、運営の一翼を任されていたんです」
火曜会のメンバーは公表されていないが、同会は河野氏を総理にするための集まり。その事務局長というのだから、よほどの信頼関係である。
さらに、秋本容疑者は河野氏が顧問の「自由民主党再生可能エネルギー普及拡大議員連盟(再エネ議連)」の事務局長も務めていた。再エネ議連は16年に発足。そのチャーターメンバーが河野氏と秋本容疑者だ。議連会長の柴山昌彦衆院議員(57)に聞くと、
「われわれ自民党は野党時代から議論を重ね、河野さんを中心に自民党エネルギー政策議連を発足させたんです。その後、それを母体に再エネ議連ができた。秋本さんは熱心に勉強していて、強い思いがありましたが、彼の意見だけが通っていたわけではありません」
しかし、再エネ議連は贈賄側である日風開の秘かな浸透を許していた。
「人を利用する天才」
風力発電業界関係者によれば、
「日風開の子会社『エネルギー戦略研究所』の役員でもある大学教授が再エネ議連にレクチャーを行っていて、“価格に偏重した入札ルールを是正すべし”という日風開側の主張を吹き込んでいたのです。価格競争では大手企業に負けてしまいますからね。さらに、菅さんが総理の時代には、日風開の副会長と菅さんとの食事会を秋本氏がセットし、総理への陳情の場を設けていました」
しかも、冒頭で触れた廃棄された資料の中には「自民党再生可能エネルギー普及拡大議員連盟7」と題されたファイルもあった。地検に隠さねばならぬ情報でもあったのか。
こうして秋本容疑者が風力発電業者と政界実力者をつなぐ中、地検は極秘に捜査を進めていた。自身のツイートがきっかけで秋本容疑者から訴訟を起こされた経済学者の池田信夫氏が言う。
「昨年6月、私が秋本について“東京地検特捜部が内偵しているらしい”とツイートしたら、名誉毀損だと秋本から訴状が届きました。こちらも弁護士を立て、どう事実と違うのか、と今年の初めに準備書面を出すと、ぷっつり返事が来なくなり、今年7月には秋本の弁護団全員が辞任してしまった。日風開の弁護士と秋本の弁護士は同じ事務所だったので、弁護団も“こりゃ無理だ”と思ったのでしょう」
前出・千葉県連関係者が怒りをにじませる。
「アイツは人を利用する天才ですよ。菅さんの総理時代、支持率が落ちると、ガネーシャの会に所属しているのに“菅さんじゃ選挙に勝てない”と騒いでいた。あんなに自分のことしか考えていない奴はいません。最近は地元で河野太郎と2連ポスターを張り、ガネーシャの会合にも出席しておらず、挙句、逮捕ですから」
[4/5ページ]