夏ドラ「ベスト3」 「VIVANT」最終回で憂助が電話でノコルに告げた言葉を読み解く

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3位:日本テレビ「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」(土曜午後10時)

 全編にわたってメッセージ性が強かった。その1つが「人を傷つける権利は誰にもない」。繰り返し強調された。

 9話。鳳来高校3年D組の鵜久森叶(芦田愛菜・19)が、クラスメイトの西野美月(茅島みずき・19)、金澤優芽(田鍋梨々花・19)、野辺桐子(田牧そら・17)によるいじめや嫌がらせに端を発して転落死したことが分かった。すると主人公の担任教師・九条里奈(松岡茉優・28)はクラス全員に向かってこう説いた。

「他愛もない話をする。その中に、ほんのわずかな想像力の欠如だけで、人は人の心に痛みを募らせることがある」(九条)

 世間に向けての言葉でもあったに違いない。文部科学省の2021年度調査によると、いじめの認知件数は過去最悪。全国の小中高、特別支援学校を合わせて61万5351件にも達している。職場でのパワハラ、SNSでの誹謗中傷も絶えない。

 九条はこの3人に向かっても厳しい言葉を口にした。半面、ドラマは3人の哀れな一面も浮かび上がらせた。それによって、現代の若者全体が置かれている恵まれない状況の一端が浮かび上がった。

 3人は鵜久森を死に追いやったことを責められるのを恐れ、自死を決意した。責任逃れのための逃避である。その前に好きなことをやろうと考えたが、カラオケとボーリングしか思い浮かばなかった。

「ないんだよなぁ、私たちの楽しみって。これくらいしか」(野辺)

 ブラック校則や行政などによる規制強化などによって、若者の自由度を狭めてきたせいでもあるのではないか。行政が若者から奪ったものの象徴例は東京・原宿のホコ天(歩行者天国、70年代後半~90年代後半)だと思っている。

 鵜久森の死は傷ましいが、西野ら3人と江波美里(本田仁美・21)との友情には胸を突かれた。西野らが鵜久森の死の責任を取るために警察署に向かおうとしたところ、3人から格下扱いされてきた江波が駈け寄り、こう口にした。

「私たち、何があっても友達だよね?」(江波)

 江波は格下扱いされてきた上、気弱だから、控え目な物言いをしたが、本当は「私たち、何があっても友達だから」と言いたかったに違いない。

 出色の教育ドラマ、青春ドラマだ。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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