【阪神・オリックス優勝】「2位と5ゲーム以上の差ならCSは開催すべきではない」タイガースOBの持論に賛否 改めて聞くその根拠
ゲーム差とCS
その結果、「地区優勝は逃したものの、ポストシーズンのワイルドカードシリーズ、ディビジョンシリーズ、そしてワールドシリーズを制するチーム」が誕生する可能性があり、これが下剋上となるわけだ。
とはいえ、MLBの場合、地区優勝は5チームによる争いで、ワイルドカードは3地区の優勝チームを除く各リーグ12チームの上位3チームが獲得する。一方、日本のCSでは、各リーグ6チームが争って上位3チームが進出することを考えると、どちらが“狭き門”なのかは言うまでもない。
CSではあまりに極端な下剋上が発生し、疑問の声が噴出したこともある。2017年のセ・リーグは広島が優勝し、2位の阪神には10ゲーム差、3位のDeNAには14・5ゲーム差をつけた。ところが、CSを制したのは3位のDeNAだったのだ。
CSでは様々なアドバンテージが用意され、一応はセパ両リーグの優勝チームが日本シリーズに進めるよう配慮されている。広澤氏の指摘に、「ゲーム差が大きい場合、アドバンテージを強化すればいい」という意見もYAHOO!ニュースのコメント欄にはあったが、広澤氏は「その意見には納得できません」と言う。
「そもそも私はCSの制度そのものに反対しています。サンテレビで『1位と2位が5ゲーム差以上のCS開催』について問題提起しましたが、3位のチームでも日本シリーズに出場できるという制度はおかしいでしょう。その上で、阪神は優勝決定時、2位の広島に13・5ゲームの差をつけました。アドバンテージが厳しいとか厳しくないとかいう問題ではなく、これほど差があるのならCSをやってはいけません。どれほどアドバンテージを厳しくしても、日本シリーズに出場できる可能性がゼロになることはないわけです。それこそが問題でしょう」
オリックスの「奇跡」が台無し
CSを開催すればプロ野球は盛り上がる。ファンも夢中だ。だから開催すべきという意見も多い。だが広澤氏は「CSを実施したことで、逆に盛り上がりを失ったシーズンもあります」と反論する。
「昨年のパ・リーグは9月30日の時点でソフトバンクがマジック1でした。ところが最終版でもつれにもつれ、10月2日の最終戦まで決まらなかったのです。そして、ソフトバンクがロッテに敗れ、オリックスが楽天に勝利してリーグ優勝が決まりました。CSのない時代なら伝説としてファンの語り草になっていたでしょう。何しろ近鉄対ロッテのダブルヘッダーの結果で西武のリーグ優勝が決まった1988年の通称『10・19』や、共に優勝をかけて巨人と中日が最終戦で戦い、巨人が優勝を決めた1994年の『10・8決戦』と並ぶ劇的な優勝だったはずなのです」
だが、オリックスが奇跡的な優勝を決めても、それはCSに出場するチームが決まったことしか意味しなかった。本来なら多くの野球ファンが感動したに違いない「オリックスの奇跡」は、CSに向けた通過点の一つに成り下がってしまったのだ。
オーナーの責任
大きなゲーム差がついた場合はアドバンテージを厳しくすべきという意見に、広澤氏が否定的なのは前に見た通りだ。
その一方で、「12チームを各6チームの2リーグ制から、各4チームの3リーグ制にすればいい」という意見も多い。リーグ優勝した3チームに加え、優勝できなかった9チームのうち勝率1位のチームをワイルドカードで選出し、4チームで日本シリーズ進出を争うという改革案だ。
広澤氏は「この意見に私が賛否を示すつもりはありませんが、非常に建設的な内容で傾聴に値するものだと考えています」と評価する。
「CSは人気ですが、これまでにも大きなゲーム差がついたり、極端な下剋上が発生したりすると、やはり疑問の声は出ていました。しかし、3リーグ制が実現すれば、疑問の声が減るのは間違いありません。現行制度では12チームから6チームがCSに進んでいたわけですが、3リーグ制になると12チームから4チームがCSに進むことになり、今よりも“狭き門”となります。ただ残念なのは、こうした建設的な意見がファンからしか出ていないということです。本来はオーナー側から提言されるべきでしょう。『日本一のチームという名誉に相応しい選出を行うためには、どういうポストシーズンが望ましいか』という観点でオーナーは議論を活発化させてほしいですね。そして、その際には興行の要素は排除されることを望みます」(同・広澤氏)