「野球U18W杯」初の世界一でも喜べない…「U18侍ジャパン」を仕切る高野連の“縦割り主義”

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「野球界全体を統括する組織がない」

 今年4月に一次候補を選び、強化合宿を実施しているが、それだけでは不足していると言わざるを得ない。首脳陣が現役の監督であれば、選手選考にかけられる時間は少なくなる。地区ごとに有望選手を集めて、実力を見極める機会を増やし、夏の甲子園期間には、地方大会で敗退した代表候補を事前に集めて合宿を実施することも検討すべきだろう。「選手は大会があるため難しい」という声も出てきそうだが、秋季大会や春季大会は、気候の関係もあって実施時期にばらつきがあり、地区ごとに分けて、合宿を行えば、決して不可能ではないはずだ。

 さらに踏み込むならば、代表チームへの重みづけと、国を挙げて野球という競技を強化していくという視点が欠けている。年代別の代表チームを縦断的に考えている組織はなく、年代を超えた連携は“皆無”と言える。

 例えば、U18W杯はあくまで“18歳以下のW杯”であり、プロや大学生、社会人であっても、いわゆる早生まれ(1~3月生まれ)の選手は出場できる。台湾代表で注目を集めた最速156キロ右腕の孫易磊は、大学1年生である。

 日本でも本当に強いチームを作ろうとすれば、高校生に限らず、有力な選手を招集すべきだが、現在、U18侍ジャパンの編成にかかわっている組織は、高校野球連盟(高野連)であり、台湾代表のような自由な発想が出てこない。

 サッカーなど他の競技であれば、それぞれの競技連盟が競技力を向上させるための強化委員があり、どの年代にはどんな強化をしていくかという指針が示されているが、野球は、そういったものは全く見られない。行きつくところとして、「野球界全体を統括する組織がない」ということに集約されるだろう。

 U18W杯で優勝したことに喜ぶだけではなく、強い日本野球を維持するためには、高野連主導ではなく、組織の垣根を越えたU18侍ジャパンを支える体制づくりがいまこそ必要ではないか。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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