藤浪晋太郎が「スーパーリリーバー」に進化、直近15試合で四球は2つ…阪神時代とは明らかに違う周囲の扱い
阪神時代との違いはなにか?
「阪神時代とは大違いというか、対照的な環境で野球をやっているようですね。金本知憲元監督(55)の時代は怒られてばかりでした。矢野燿大前監督(54)の下ではコミュニケーションが不足していたように見えました」
藤浪がタテジマのユニフォームを着ていたころを知るNPBスタッフがそう言う。
藤浪が「金本元監督の厳しさ」に直面したのは、2016年7月8日の広島戦だろう。四死球の多さと安易にストライクを取りに行き、それを痛打される傾向が続いていると憤怒した金本元監督が懲罰的な意味も含めて8回161球を投げさせた。前年まで2ケタ勝利を続けてきた藤浪が「成績不振」に陥ったのも、ちょうどその年からだった。イップスを指摘する声もあったが、それだけではないようだ。
「金本元監督はシーズン序盤に、出塁した投手にも『盗塁』のサインを出しました。藤浪は勝つために必要な采配なんだと自分に言い聞かせ、走塁の練習もしましたが、送りバントのサインが出たときに全力疾走しない投手が干されたこともありました。元監督との野球観が合わなかったみたいですね」(前出・NPBスタッフ)
矢野前監督は「本人のやりたいように」とし、ファーム再調整中も見守るだけだった。前監督の優しさでもあるが、両者の距離感はむしろ広がってしまった。
「ファーム指導者も助言をしましたが、藤浪に反論されると、何も返せませんでした」(在阪記者)
藤浪は「褒められて伸びるタイプ」なのかもしれない。野球に専念できていることもプレーで証明してみせた。
乱打戦をゼロにおさえた9日のレッドソックス戦を無安打無失点に抑えたのは前述の通りなのだが、圧巻だったのは「守備」だった。
重盗を決められるなどピンチを広げてしまい、ボテボテのゴロが一塁手と二塁手の間に転がった。二塁手のジョーダン・ウエストバーグ(24)が追いついたものの、一塁送球が少し逸れた。それを救ったのが藤浪だ。反応良く、マウンドから一塁ベースカバーに走り、最後は右足を一塁ベースに残して体を延ばす。間一髪のアウトが成立した。藤浪の運動神経とスピード、野球センスが詰め込まれた数秒間だった。
「藤浪がアウトにしてくれなかったら、同点に追いつかれていました」(地元メディア関係者)
集中していたから出来たプレーでもある。好リリーフで7勝目も転がり込んできた。試合後、藤浪は日米の記者に囲まれ、こう答えている。
「あまり調子自体は良くないなと自分では感じていましたが、それでもストライクゾーンにアタックするのが自分の仕事。コースを狙って投げられるピッチャーでもないですし、ある程度アバウトにゾーンに強い球を投げ込めばいいってピッチングコーチやデータ担当の人も言ってくれているし、それを信じて、ですね」
目を輝かせて喋る藤浪を見たのは、何年ぶりだろうか。米ネットラジオ局フラットリーツ・ポッドキャストは「オリオールズのポストシーズン進出を決めるにあたって、FUJIは極めて重要な生命線だ!」とも語っていたが、その通りになったのである。
半年ほど前、「いつマイナーに行くんだ?」と酷評されていた藤浪。評価をここまで変えた投手はほかにいない。古巣・阪神もリーグ優勝を決めたが、“褒められて伸びる”藤浪もワールドシリーズ進出の栄光が見えてきた。