G20首脳宣言でウクライナにとって最大の誤算は? ゼレンスキー大統領の引くに引けない苦しい事情

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G20首脳宣言について「誇るべきものは何もない」

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は9月11日、「引き続き国家の防衛に集中しなければならない」と強調した。ウクライナ戦争に対する国際社会の反応が厳しくなる中、ゼレンスキー氏はロシアへの徹底抗戦の姿勢を改めて示した形だ。

 インドのニューデリーで開催された主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は9月9日に首脳宣言を採択したが、ウクライナ戦争に関する記述は昨年よりも後退した内容だった。

 ロシアの侵略を強く非難し、ロシア政府に軍の撤退を求めた昨年の首脳宣言とは異なり、ロシアへの非難には言及されず、領土獲得を目的とした武力による威嚇や行使を控えることを求める内容に留まった。

「ロシアの侵略から世界を守っている」と主張するウクライナ政府はG20宣言について「誇るべきものは何もない」と切り捨てた。日本を始め西側メデイアも同じ論調だが、筆者は「この宣言こそが国際社会の総意なのではないか」との思いを禁じ得ないでいる。

 西側色が強いG7とは異なり、G20は「グローバルサウス」と呼ばれる発展途上国の国々が多く参加している。彼らが求めているのはロシア打倒ではなく、自国に多大な打撃を及ぼしているウクライナ戦争の一刻も早い停戦だからだ。

ゼレンスキー氏が停戦に踏み切れない事情

 ウクライナにとってのさらなる誤算は、同国に対する最大の支援者である米国がこの宣言を容認したことだ。

 ウクライナ問題でG20の議論を膠着させるよりも、中国を封じ込めるためにインド太平洋地域との結びつきを強化したい米国は、このサミットを外交的な成功としたいインドのナレンドラ・モディ首相に花をもたせたとの指摘がある(9月12日付クーリエ・ジャポン)。

「中国への対抗」という点で米国とインドの利害が一致したわけで、米国は戦略の軸足をロシアから中国に移行させようとしているのかもしれない。

 ウクライナが望んでいる「戦場での勝利」が得られず、国際社会での支持が得られなくなれば、「そろそろ停戦の潮時だ」という声が高まるのは当然の流れだ。ゼレンスキー氏にとって望ましくない展開であるのは言うまでもない。

 ゼレンスキー氏には停戦に踏み切れない事情がある。

 独日曜紙「ビルド・アム・ゾンターク」(日刊紙「ビルド」の姉妹紙)は9月10日、ウクライナ世論調査機関「民主計画財団」に依頼した調査の結果を報じた。それによると、ウクライナ市民の90%が「ロシアが占領している地域をすべて奪還できる」と確信している。ロシアとの交渉についても63%が拒否し、賛成したのは30%に過ぎなかった。

 ウクライナ政府は国民の期待に反するロシアとの停戦交渉を口にできないことから、この戦争は来年以降も続く可能性が高まっている。

 米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長は9月10日、「戦闘の妨げとなる冬の到来までに残された期間は約6週間」と指摘した。今後の戦闘再開は来春以降となるが、ウクライナに勝算があるとは思えない。

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