「あなたの妻は男性秘書とデキています」 ある日、突然届いた怪文書に49歳夫が思ったこと

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「偽善でもいいの」

 彼女は、だからといってケイさんのことをとやかくは言わない。お互いにこのまま夫婦としてやっていけばいい。その一点張りだ。

「つい先日も、ふたりで養親のところへ行ったんです。一緒に食事をして穏やかに会話して。でもなんだか偽善的な光景だなと思ったから、玲佳にあとからそう言いました。すると玲佳は『偽善でもいいの。仮面夫婦でいいのよ。汚いことは見たくないから』って。仕事が大変なんだろう、仕事で汚いところをたくさん見ているんだろうと思いました。そういう言葉を聞くと同情しちゃうんですよね、やはり。彼女が離婚を望まないなら、それでもいいかと思ってしまう。ケイちゃんの気持ちがわからないから、僕がもし離婚したら結婚してくれるかと先日、聞いてみたんです。彼女は一言、『わからない』って。まずはローンを返し終わらないと自分の人生が始まらないと言われて、彼女の現実が迫ってきたような気がした。30代前半の彼女の人生を縛ってはいけないと肝に銘じました」

 ごく普通の家庭をもつはずだった崇彰さんは、最近、どうしてこんなふうになってしまったんだろうと考えてばかりいるという。考えてもどうにもならない。だがどうにもならないからこそ考えるともつぶやいた。

「練習でもして、すべて忘れてきます」

 彼はギターを弾くまねをしながら立ち上がった。一瞬忘れても、また重い雲が心の中に広がるのだろう。

「半世紀生きてきて、人生、思い通りにはいかないということだけはよくわかりました」

 この先もどうなるのか、それは誰にもわからないのかもしれない。

前編【49歳夫が語る“仮面夫婦の深い悩み” お互い不倫中なのに、どうしても離婚はしたくないという妻の事情に同情も】からのつづき

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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