「あなたの妻は男性秘書とデキています」 ある日、突然届いた怪文書に49歳夫が思ったこと

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ライブの高揚感のまま

 たまたま学生時代の友人たちが集まる機会があった。あの当時のことを話しているうちに、またバンドでも組んでみるかと話がまとまった。別に人に聴かせなくてもいい、自分たちが楽しもうと月に1、2回集まるようになった。

「練習して一杯飲んで帰るのが楽しくてね。稽古場となったスタジオ近くのパブにいつも寄り道していました。店でアルバイトをしている若いケイちゃんという女性が、僕たちのしていることを知って聴いてみたいと言い出して。店の主人まで乗っちゃって、『うちじゃできないから、知り合いのジャズバーでやってみたら』ということになった。妻にその話をしたら、『そうなの。よかったね』とは言ったけど、いつやるのとは聞いてくれなかった。やはり僕には興味がないんだなと、さらに寂しくなりました」

 昔の友人知人にも連絡をした。彼らのライブ当日、小さなジャズバーは客でいっぱいになった。パブのバイトのケイさんは、崇彰さんが招待した。よろこんで来てくれた彼女は、花束をくれた。

「ライブが終わってお客さんたちと飲んで騒いで。彼女は最後までいてくれました。興奮していたんでしょうね、僕。彼女を誘ってさらに別の店に行って、最後は彼女の部屋に行ってしまった。でも眠っちゃったんですよ。明け方に目が覚めたとき、彼女に抱きつかれて……」

妻との間に埋めようのない距離が

 帰宅すると、妻はいなかった。何だ、もう少し彼女のところにいればよかったと思った。そしてそう思ったことに自分でびっくりした。それまでの彼は、常に玲佳さんを思い、玲佳さんの人生を応援したいと思っていたはずだった。だが、もしかしたら一緒に過ごしてくれない玲佳さんに、言葉にならない不満を抱えていて、すでに抱えきれなくなっているのかもしれないと感じたという。

「知らず知らずのうちに、玲佳との間に埋めようのない距離ができていました。玲佳は週に数回、通いの家政婦さんを頼んでいたので、家の中はきれいになっているんです。ただ、めったに彼女自身が僕を迎えてくれることはない。コロナ禍では家にいることも多かったけど、ずっと自室にこもっていましたね。仕事が忙しかったようです。たまに部屋から出てくると、僕がいれたコーヒーをおいしそうに飲んでいました。『もうじき、ゆっくりできると思う』と言い続けていたけど、全然そうはならなかった」

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