55年の時を経て初DVD化…映画「首」が描く恐ろし過ぎる事件の深層 「首だけ持ってくれば、わかるんじゃないですか」

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首なし事件の系譜

 札幌ススキノの“首なし事件”は、犯行におよんだ女性とその両親の一家3人が逮捕される異様な展開となっている。8月28日には、刑事責任能力の有無を判断するための鑑定留置が決定した。

「確かに衝撃的な事件でした。しかし、犯罪史上、バラバラ殺人も含めた“首なし事件”は何度も発生しており、枚挙に暇がありません」

 と解説するのは、古手の元週刊誌記者である。

「1932(昭和7)年、名古屋で発生した女性の首なし事件は、あまりの陰惨さに、江戸川乱歩の小説になぞらえて“陰獣事件”と呼ばれました。同年には玉の井(現在の墨田区東向島にあった歓楽街)で男性の首なし切断遺体が発見され、これが“バラバラ殺人”なる名称が定着するきっかけとなっています。1965(昭和40)年にはオランダ・アムステルダムで日本人駐在員の首なしバラバラ遺体が発見されました。これを小説化したのが、松本清張の『アムステルダム運河殺人事件』です。そのほか、1997(平成9) 年の神戸連続児童殺傷事件、2017(平成29)年の座間9人連続殺人事件でも頭部が切断され、日本中が震撼したのは記憶に新しいところでしょう」

 かように“首なし事件”は頻繁に発生しており、実はそう珍しい事件ではないのだという。しかし、いったいなぜ、犯人は“首”を切断するのだろうか。

「事件ごとに犯行原因や犯人の精神状態などに違いがあるので、一概に述べることはできません。しかし以前に犯罪学者に取材したら、犯人は異様な興奮状態にあるため、顔のある“首”こそが人間の最大の特徴であり、その首さえ切り落としてしまえば、存在自体もなくなったことになる――そう思いこんでしまうらしいのです」

 戦国時代には、敵将の首をとってきて、知己に見せ、当人の首であるかどうかを確認させる“首実検”がさかんにおこなわれてきた。歌舞伎・文楽の「盛綱陣屋」や「熊谷陣屋」「寺子屋」などは、その首実検をめぐるドラマティックな名作として、いまでも上演されている。

「しかし、日本でこの種の事件といえば、なんといっても1944(昭和19)年に発生した、“首なし事件”でしょう。しかも弁護士が冤罪を証明するために、墓を掘り返して遺体から首を切断したというのですから、別の意味の異様さで、長く語られることになりました」

 実はこの事件が、1968(昭和43)年に、そのものズバリ「首」と題して映画化されている。小林桂樹主演、橋本忍脚本、森谷司郎監督という、堂々たる布陣の東宝映画である。

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