「実はスーパーの食材で誰でも作れる」「野菜はタネもヘタも使う」 精進料理のレシピを禅寺の高僧が伝授!

ドクター新潮 ライフ

  • ブックマーク

タネもヘタも使う

「こんにゃくのいりだし」に使う薄いこんにゃくは、軽く切り込みを入れて塩でもんでから、食べやすい大きさに切ってゆでる。

 ゆでる時間は数分で、ゆであがって水気を切ったら、熱くしたフライパンに胡麻油をたらし、両面に焦げ目がつくまで炒める。

「こんにゃくは薄く切って、周りがカリッとするように油で揚げる感じで炒めます。切り目を入れるとステーキみたいになります」

 炒めるというより焼くという印象である。

 こんにゃくを炒めている間に、住職は手早くダイコンのひげ(根)を焼き、皮つきのまますりおろし始めた。皮も一緒にというところが、実に理にかなっている。精進料理では基本的に無駄を出さないということで、ダイコンはもちろんニンジンもゴボウも皮はそのまま使う。ピーマンのタネも、切り落としたヘタもすべて料理に使う。タネは抗酸化物質のかたまりであり、皮は細菌感染や昆虫などから本体を守るために、抗酸化作用のあるβカロテンやビタミンCなどが豊富だから、丸ごと食べることは健康にとって無駄がない食べ方なのである。

『精進百撰』ではおろしたショウガを添えているが、今回はショウガのかわりに大根おろしを添えた。そのうえからショウガ醤油をかければ出来上がりである。

 余談だが、精進料理では焼く、揚げる、煮る、和える、蒸すはあるが「生で食べることはありません。大根おろしぐらいです」と住職は言った。

「トマトはだしと同じ」

 それにしても、料理の前の準備を知らなければ、まるでインスタント食品を作るような素早さである。

 みそ汁は、北海道産の真昆布でだしをとったあと、ピーマンのタネや大根おろしの汁を入れる。ここにトマトを加えるのだが、崩れやすいから、食べやすいように4等分か6等分に切って最後に入れる。「トマトはだしと同じなので、普段からよく食べる」そうだ。

 その中へ有機の玄米みそを溶き、最後にだしをとったあとの昆布を刻んで入れたらみそ汁の出来上がりである。トマトのみそ汁なんて初めて口にするが、意外に暑い日は酸味がすっきりしてのど越しがいい。

 ラストは「秘伝豆の豆ごはん」だ。乾燥させた青大豆を前夜に水で戻し、この日にゆでて冷蔵庫で冷やしたものを使う。混ぜるごはんも白米ではなく酵素玄米だ。厨房には酵素玄米専用の炊飯器があって、すでに炊き上がっていた。

 通常、玄米は硬いという印象があるが、「酵素玄米は酵素の効果で柔らかく、しっかりかまなくていい」そうだ。実際に味見をしてみると、もち米のような粘りがあって実においしい。とても玄米とは思えない食感である。柿沼住職は「冷めてもおいしいし、冷製スープにすれば食欲をそそります」と言った。

 これに用意した青大豆を混ぜて、塩をひとつまみ、パラパラと振りかければ完成である。食べておいしく栄養価も高い。ただ玄米は胚芽などに農薬が残留しやすいので無農薬を選んだほうが無難だろう。

 これに、「恵那(岐阜県)の和尚さんからいただいた」という香ばしいたくあんを添えて、厨房での調理は完了した。

次ページ:みそ汁の三段活用

前へ 1 2 3 4 5 次へ

[4/5ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。