「実はスーパーの食材で誰でも作れる」「野菜はタネもヘタも使う」 精進料理のレシピを禅寺の高僧が伝授!

ドクター新潮 ライフ

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秘伝豆の豆ごはん

 病人だった当時の水上には、栄養価やカロリーなどが計算された病院食よりも、精進料理の方が体に合ったのだろう。それに徹することで、死んで当然の状態から生還できたうえ、寿命をまっとうできたのだから、実に皮肉で痛快だ。

『精進百撰』には、水上が作った四季折々の精進料理が紹介されているが、料理本でないせいか、作り方の説明はあっさりしていて素人には難しいものも少なくない。そこで柿沼住職に、この中から「ピーマンと油揚げ」と「こんにゃくのいりだし」、そしてオリジナルの「秘伝豆の豆ごはん」を作っていただいた。秘伝豆とは東北地方の青大豆のことだ。一人暮らしの人や高齢者でも作れるように「スーパーでも買える食材で」とお願いした。

 住職は厨房に入ると「般若心経」を唱え始める。命を捧げてくれた食べ物の葬式なのだという。

 厨房では、実際には3種類の精進料理が同時進行で作られるのだが、ここでは手順がわかりやすいように「ピーマンと油揚げ」から紹介する。

「調味料だけはケチってはだめ」

 柿沼住職は「精進料理は準備に時間がかかっても、調理は短時間ですからあっという間にできます」と言いながら、ピーマンをタテ4等分に切り始めた。タネをとり小皿に集める。タネは焼くと跳ねるので、スパイスとしてみそ汁に入れるという。食べ物の命をいただくという考え方だから、「基本的に食べないところはない」という。

 切ったピーマンは弱火で網焼きし、焦げ目がついたら火からおろす。

 となりで適当に4等分にした油揚げも、やはり網焼きにした。これも焦げ目がつくまで焼く。この二つを皿に盛り合わせ、そこへ醤油にみりんを少々加えたひたし汁をかければ出来上がりである。なんとも簡単で、焼く時間を入れても15分ほど。あまりにも手際がいいので驚いていると、「料理人はせっかちです。トロトロしていると、(大本山の)永平寺では包丁が飛んできます」と住職は笑った。

『精進百撰』では酒とみりんに砂糖を少々加えているが、今回は「こだわりの生醤油」を使用したのでみりん以外は使わなかった。

「調味料だけはケチってはだめです。手間暇かけた本物の調味料を使ったら、間違いなく本当においしいものができます」

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