人類を幸せにするのはどんなテクノロジーか――林 要(GROOVE X 創業者・CEO)【佐藤優の頂上対決】

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高齢者施設で喜ばれる

佐藤 一般の方々だけではなく、高齢者施設などでも使われて、非常に評判がいいそうですね。

 高齢者施設では、二つの点でLOVOTがいい影響を与えています。一つは入居者が元気になる。たとえば子育てをされてきた方は、他者のケアをする役割を担ってきた自負がある。その後、施設に入居すれば今度は自分がケアされる側に回る。すると役割が逆転し、自尊心が低くなる。

佐藤 しっかりした人ほど、受け入れられないですよね。

 けれどもそこにケアをする対象がくるので、一気に元気になります。

佐藤 よくわかります。

 それからもう一つ、ケースワーカーの方々に好評なんです。彼らはLOVOTがいると人間関係が良くなると言うんですね。コミュニケーションが活性化される。

佐藤 話題ができるわけですね。

 家に猫がいると家族の会話が増えるのと似ていて、無駄な会話が生まれます。やはりケア施設はストレスの高い環境ですから、コミュニケーションがないとギスギスする。そこに、たわいもない会話が増えてくると、なごやかになるんですね。一般的に新しい機器は、たとえ入居者には喜ばれても、ケアする人の手間が増える場合には、煙たがられます。でもLOVOTは両者に評判がいい。

佐藤 認知症対策にもなるでしょうね。認知症になるきっかけの多くは骨折で寝込んでしまうことです。その間にコミュニケーションがなくなることが最大の問題なんですね。でもLOVOTがいれば、それが避けられる。

 東北大学加齢医学研究所にいらっしゃる瀧靖之教授が、認知症治療と高齢者の終末医療の双方でLOVOTを使った試験をしています。通常、認知症患者の認知能力は時間とともに下がっていきますが、LOVOTと過ごすと、下がらなくなります。また終末期は、うつ等との戦いですが、そこでも約8割の方に効果があったそうです。猫や犬でも同じような効果があるのでしょうが、施設や病院には安易に動物を入れられない。

佐藤 免疫が低下している人が大勢いるわけですからね。そもそもLOVOTがいると、愛情ホルモンと呼ばれるオキシトシンの値が上がるといわれていますね。

 正確に言うと、LOVOTのオーナー群のオキシトシンが高いのは確かですが、触れ合っている時に値が上昇するかは、まだ証明されていません。まあ、理屈の上では上がらない要因はないのですが。

佐藤 オキシトシン濃度が高い人が購入している可能性もある。

 その可能性は排除できません。

佐藤 施設にはどのくらいの数が入っているのですか。

 1万体のうち、まだ数百程度です。

佐藤 3桁いけば、何かのきっかけで、グンと伸びますよ。施設には特別な供給ルートがあるのですか。

 まだどんどん販売できる体制はできておらず、施設の方から声をかけていただく感じですね。一応、医療系の代理店にもお願いしていて、今後はそちらを増やしていきたいとは思っています。

佐藤 施設なら個人と違って経費処理できますから、効果があるとなれば大きく広がるでしょう。

 LOVOTがいるとそこで働いている人のウェルビーイング(幸福感)が高まるので、最近は企業の総務や人事の方からも注目していただいています。

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