「時給にしたら500円」「骨折してもそのまま運転」 低賃金、過労死ワーストのトラックドライバー、現場からの悲痛な叫び「僕たちの存在を感じてほしい」
現場関係者を落胆させた政府案
こうして荷主都合によって長時間労働が起きているにもかかわらず、今回の働き方改革では、960時間の時間外労働の制限を守らなかった運送事業者にのみ「6カ月以下の懲役、または30万円以下の罰金」という明確な罰則が設けられ、荷主には同等の罰則がない。
「労働時間を守れない原因は荷主にあるのに、路上駐車で切符を切られるのは運送側。労働時間が守れず罰則を受けるのも運送側。こんな不公平があっていいのか」(30代、中長距離、雑貨)
弱い立場にある運送業界の労働環境を改善するには、国が率先して荷主に規制や法的措置をかけていく必要がある。とりわけ、現場の労働環境がここまで悪化した源流に、国によるあの規制緩和があったことに鑑みても、国は運送側に寄り添った対策をすべきだ。
が、これまで出されてきた対策や案に、現場はたびたび混乱させられてきた。
今回の2024年問題においても、岸田首相が閣僚会議を開いたのは今年3月末。6月上旬をめどに政策パッケージを取りまとめるよう指示したことに対し、現場からは、
「これまで5年もの猶予があった中、国は一体何をしてきたのか」
「現場を知らない人たちに、たった2カ月で何ができるのか」
「もう何もしないでほしい。国が何かすればするほど状況が悪くなる」
という声が噴出した。
その後出されたパッケージは、業界が危惧していたとおり具体的な案が示されておらず、「推進」「拡充」「徹底」という言葉ばかりが並べられ、現場関係者を落胆させた。
「これは5年前に出すべきもの。今回はしっかり数字を出し、運送業界が生き残れるように荷主を規制する内容のものを出すべきだった」(前出50代、運送業経営)
賃上げがかなわない理由
なかでもドライバーを激怒させたのが、高速道路における大型トラックの最高速度を現行の時速80キロから引き上げるとした案だった。
労働時間が減って運べる荷物が減るのなら、トラックの制限速度を上げればいい、という安易な考えに、現場は憤慨。
「結局自分たちの生活のことしか考えていないんですよ、世間も国も。最高速度を引き上げれば、ドライバーはより集中力を要することになる。働き方より結局荷物。本末転倒です」(同)
働き方改革が施行され、ドライバーの労働時間が短くなっても、今までと同等の給料を支払うには、運送事業者は荷主や元請に運賃を上げてもらうしかない。
が、トラックドライバーに対する働き方改革において、「長時間労働の是正」はいくらでも話が進むのに、なぜか併せて取り組むべき「運賃の値上げ」「給料の保証」においては議論が同じようには進まない。
「運賃交渉をしようとすると、荷主からはすぐに『その値段でできないならいいよ、他(の会社)を探すから』と言われてしまう」(30代、運送業経営)
「荷主に運賃交渉などをするためには、運送企業が足並みをそろえて強い態度で臨まないといけないんだが、それができない。団結して値上げを要求しても、1社が『うちは今のままでやります』と言えば、仕事は全部そっちに流れますから」(50代、運送業経営)
「国は『標準的な運賃』という、運送事業者に最低限必要な運賃を提示しています。が、それを守らなくても現状は荷主に何の罰則もないので、そこを改善してほしい。そうじゃないと24年はとてもじゃないが越えられない」(40代、運送業経営)
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