「時給にしたら500円」「骨折してもそのまま運転」 低賃金、過労死ワーストのトラックドライバー、現場からの悲痛な叫び「僕たちの存在を感じてほしい」
「本当に荷物を運べなくなる日が…」
さらにこの「規制緩和」は、現場にさらなる深刻な影響をもたらした。「高齢化」と「人手不足」である。
先述の通り、トラックドライバーの平均年齢は約50歳。全産業の平均年齢よりも高い。有効求人倍率は、コロナ前のピーク時からは少し落ち着いたものの、それでも現在は2.4倍と全職業平均より2倍近く高くなっている。
もともと過酷な労働環境。稼げたから入ってきていた人材も、「過酷なうえに稼げない」となれば若手が入ってくるわけがない。それに加え、準中型や中型という免許制度の細分化で、ますます若手が入りにくい環境となり、団塊の世代が抜けても、現場の「高齢化」は年々深刻化しているのだ。
「運送業界は元々人手不足の状況。このまま2024年を迎えたら、今後本当に荷物を運べなくなる日が来ると思います」(50代、運送業経営)
規制緩和から三十余年。元々日本にあった「おもてなし文化」も手伝って、「荷主至上主義」の構図は次第に「商習慣化」。現在の運送事業者やドライバーたちは、過剰サービスの実質的強要に苦しめられている。
日本のサービス業において、客の言うことは絶対だ。
それでも働き方改革施行に向け、これまで運送業界は、なんとかこの過酷な労働環境や低賃金を改善すべく、荷主に交渉などをしてきたが、要望に応じてくれる荷主はごくわずかだ。
21時間半の「荷待ち」
そんな「荷主至上主義」のなかでも運送事業者やトラックドライバーを苦しめるのは、「長時間の荷待ち」だ。
荷主が指定した時間に到着することはドライバーにとっては当然のことだが、必要なものを、必要な時に、必要な量だけ受け入れ、生産現場の効率化やスペースの確保を図ろうとする荷主の都合により、指定時間になっても「まだ作業が終わっていない」と入庫させてくれない荷主がごまんといる。
これにより、工業団地などには毎日のようにトラックの長蛇の列ができるが、自社に来るトラックドライバーにどのくらい荷待ちさせているかを把握している荷主は、2024年を目前にして、わずか10~20%だ。
「2時間3時間の荷待ちは当たり前。『呼ばれたらすぐに入れるところで待っていろ』と言われますが、それはもはや暗に『路上駐車』を指示していることと同じですからね」(前出40代、中距離、雑貨)
「冷凍食品の会社で荷待ちを21時間半させられたことがあった。それまでの最長時間は18時間。いつ呼ばれるか分からないので、その間はただただ現場で時間を潰すしかない」(40代、長距離、食品)
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