「時給にしたら500円」「骨折してもそのまま運転」 低賃金、過労死ワーストのトラックドライバー、現場からの悲痛な叫び「僕たちの存在を感じてほしい」
「問題は長時間労働ではなく低い給料」
が、実はこの働き方改革によるトラックドライバーの労働時間の短縮は、現役のドライバーたちからは歓迎されていない。この「長時間労働」問題と表裏一体をなす、「低賃金」という問題があるからだ。
現在、トラックドライバーの平均年収は、一番高い大型車でも463万円。1千万円稼げていた職業が、今や全産業平均の489万円と比べても約5~12%低い状況にある。
彼らの給料体系の多くは「歩合制」。働き方改革によって労働時間が減れば、さらに給料も減ることになる。
それに、あの1990年ごろのCMが問うた「24時間戦えるか」に当時「戦える」としたトラックドライバーたちは、現在日本の物流をど真ん中で支えている平均年齢約50歳の層にいる。
「当時、稼ぎたくてこの業界に入ってきたので、長時間労働にそれほど大きな不満はありません。むしろもっと働きたい」(50代、長距離、食品輸送)
「今の給料を時給に直したら500円。もはや『稼ぎたい』とかいうレベルじゃない。長時間労働しないと生活できない状態」(前出50代、長距離、雑貨)
「国が真っ先に見直すべきなのは、長時間労働じゃない。問題は『給料』のほうです。なぜわれわれドライバーが長時間走っているのか知ったうえで対策をしてほしい」(40代、中距離、雑貨)
過剰サービスの激化
「3年走れば家が建つ」ほど稼げたトラック輸送職に、一体何があったのか。きっかけは1990年の「物流二法」による規制緩和だ。
運送業界に新規参入がしやすくなったことで、4万5千社ほどだった運送業者は、一気に6万3千社にまで急増した。
折しも時はバブル崩壊直後。貨物輸送量が低迷するなか、規制緩和により事業者は増加し、同業同士で「荷物の奪い合い」が起きたのだが、労働集約型産業の運送業界において、他社との差別化の手段は「運賃の値下げ」か、ドライバーによる「付帯作業」くらいしかない。
この「付帯作業」は、トラックドライバーによる手荷役(手による積み下ろし作業)はもちろん、物流センターでのラベル貼りや検品、仕分け、棚卸し、さらにはスーパーで商品の陳列をさせられるケースまである。そのほとんどは現状「無料」だ。
結果、こうした過剰サービスの激化によって、現場は「荷主至上主義」に。ブルーカラーの花形職は「過酷なうえに稼げない仕事」へと変貌を遂げたのだ。
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