「時給にしたら500円」「骨折してもそのまま運転」 低賃金、過労死ワーストのトラックドライバー、現場からの悲痛な叫び「僕たちの存在を感じてほしい」
「自宅に届かない」ではなく、「商品を作れない」事態に
消費者が日々、直に接する物流関係者は、宅配の配達員。ゆえに2024年問題と聞くと、真っ先に玄関前に立つ配達員を思い浮かべるかもしれないが、宅配は輸送量ベースでいうと、総輸送量のわずか7%以下。残り九十数%は企業間輸送である。ゆえに、トラックドライバーの労働時間の短縮で影響が大きく及ぶのは、
〇生産工場→物流センター
〇物流センター→スーパーやコンビニ
〇部品製造工場→建築現場
〇飼料生産農家→畜産農家
など、普段われわれの目には届かずとも、非常に重要な輸送網においてである。
つまり、来年4月以降は、プリンを作る工場に注文通りの量・納期で原材料が入らなくなり、朝採り野菜がスーパーから消え、修理を依頼したパソコンの納期が遅れ、今まで頼んでいた牛のエサが畜産農家に届かなくなる――こうした事態が起こり得る。
ECサイトでレトルトカレーを購入することを例に挙げれば、2024年問題とは「ECサイトで購入したそのレトルトカレーが自宅に『届かなくなる問題』」なのではなく、「その注文したレトルトカレーが『作れなくなる問題』」なのだ。カレー製造工場に野菜や肉を運ぶのも、ひいてはその牛を育てる飼料を運ぶのも、企業間輸送のトラックドライバーなのである。
繁忙期の睡眠時間は3~5時間
トラックドライバーに対する「働き方改革関連法」の施行が5年間猶予されたのには、理由がある。「長時間労働の改善に時間がかかる」からだ。
全日本トラック協会の資料によると、2021年時点でのトラックドライバーの年間労働時間は、全産業平均と比較して、大型トラックで432時間(月36時間)、中小型トラックで372時間(月31時間)長い。
特に全国を走り回る長距離トラックドライバーの場合は、運転席の後ろにある寝台で車中泊しながら1週間ほど家に帰らずに荷物を運ぶため、必然的に長時間労働になりやすい。
過労死の労災認定件数もトラックドライバーがワースト。繁忙期にいたっては睡眠時間が3~5時間と、ドライバーにとってこの「長時間労働」は、早急に改善していかねばならない問題であることは間違いない。
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