阪神「リーグ制覇」で、東京人は知らない「サンテレビ」が最高視聴率 運を味方につけて奇跡が起きた
「リレー中継」
「弊社は1969年5月1日にテレビ放送を開始しましたが、当初から阪神戦の中継は大切なコンテンツの一つでした。弊社の中継における独自色の一つに、完全中継を行っていることが挙げられます。試合はプレイボールからゲームセットまで全てお届けします。例えば 、1992年9月11日の阪神・ヤクルト戦は、延長15回引き分けで終わりましたが、試合終了は午前0時26分でした。6時間26分の試合時間はプロ野球の最長記録で、この試合を弊社は最後まで放送しました」(同・編成部)
近年、地上波でプロ野球の中継は減少傾向にある。サンテレビも例外ではないのだが、それでも年間で約60試合、阪神の公式戦を中継しているという。
「内訳は半分がホームゲーム、半分がビジターゲームです。約60試合のうち約10試合は『リレー中継』を行っています。これはABCテレビさんの中継時間が終わると弊社が中継を受け継ぎ、試合終了まで放送するというものです」(同・編成部)
これほど力を入れているのだから、これまでもサンテレビは、阪神がセ・リーグを制した瞬間に立ち会ってきた。2003年のリーグ優勝の際は、9月15日に甲子園で行われた対広島戦で決まり、当時の星野仙一監督が胴上げされた時の世帯視聴率は13・4%だった 。
社内では悲鳴
興味深いことに、前回2005年のリーグ優勝も9月29日に甲子園で決まり、対戦相手も今回と同じく巨人、監督も岡田監督だった。何から何まで同じシチュエーションだったわけだが、この時の世帯視聴率は14・9%だった。
いずれも関西圏が大いに盛り上がった瞬間だったにもかかわらず、03年が13・4%、05年が14・9%、そして23年が20・8%と、今回の視聴率だけが突出している。なぜなのだろうか。
「03年と05年は他局さんも生中継していました。ところが今年は、弊社の独占中継でした。弊社は兵庫県と大阪府を筆頭に、関西圏をカバーしています。他局さんが試合を放送しなかったので、視聴者の皆さんが弊社にチャンネルを合わせてくださった。これが高視聴率の要因だと考えています」(同・編成部)
サンテレビが放送する公式戦の約60試合は開幕前に決まっており、変更することや増やすことはできないという。つまり、運が悪ければ、阪神がリーグ優勝する瞬間を報じられなかったかもしれないのだ。
「今シーズンは開幕前から阪神優勝の可能性が指摘され、実際、序盤から勝ち続けました。社内でも例年にもましてセリーグ制覇の気運が高まり、『優勝特番を必ず当日に放送する』と決定、準備を重ねてきました。それでもXデーは『9月20日以降だろう』という見立てだったのです。ところが、阪神の連勝と広島の連敗が重なり、どんどんXデーが前倒しになりました。社内では『準備の時間が足りなくなって大変だ』という声が上がっていましたが、まさに嬉しい悲鳴でした」(同・編成部)
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