【VIVANT・最終回】今年最大のヒットドラマなのに「続編は白紙」のワケ

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観る側の好奇心を掻き立てた「別班」の存在

 別班の存在を巡っては、軍事ジャーナリストの間で「ある」「ない」と意見が割れている。また、防衛省は「過去も現在も存在しない」としているが、石破茂元防衛相(66)は「存在している」と語った(「週刊文春」2023年9月14日号)。

 内情どころか、存在の有無がはっきりせず謎めいているが、だからこそドラマの題材に絶好だった。観る側の好奇心を掻き立てた。

 別班がよく知られる組織だったら、1話で自爆テロを起こしたテントのアル=ザイール(エルハム・バヤル)が憂助に向かって「お前がヴィヴァンか?」と言った途端、それが別班だと察しがついてしまう恐れがあった。すると興ざめしただろう。

 また、別班の役割も不明だったから、興味をそそられた。別班に目を付け、原作を書いた福澤監督の作戦勝ちにほかならない。

 ストーリーは謎を数珠つなぎにして、視聴者の関心を片時も逸らさなかった。「VIVANTの意味は何か(1、2話)」、「別班は誰なのか(2~4話)」、「誤送金事件の真相(1~4話)」、「テントとベキの正体(4~9話)」――。

 一方で謎以外のストーリーも見応えがあり、なおかつテンポが良かった。「憂助たちのバルカ警察からの逃走劇(1~3話)」、「誤送金事件の犯人でテントのモニターだった丸菱商事・山本巧(迫田孝也、46)の処刑(4話)」、「野崎が憂助の過去を突き止め、憂助は父親がベキだと知る(5話)」、「公安と別班の攻防戦(6話)」、「憂助が別班の仲間4人を銃で撃ち、テントに潜入(7話)」――。

 謎解きに歯ごたえがある一方、それ以外の部分でも視聴者を釘付けにした。胸のすくような展開の連続だった。福澤氏の監督作「半沢直樹」(2013年、2020年)の脚本を書いた八津弘幸氏ら4人の脚本家チームの功績だ。

 八津氏がメインで全話書き、そこに李正美氏、山本奈奈氏、宮本勇人氏の3人が交代で1人ずつ加わった。毎話2人体制。だから、絡み合った糸のような物語が紡げた。1人の脚本家が全話書くドラマも多いから、贅沢極まりない体制である。

 日本テレビの大ヒットドラマ「家なき子」(1994年)のチーフプロデューサーで前社長の小杉善信氏(69)に、大当たりするドラマの条件を問うた際、こんな答えがあった。

「早く観たい、今すぐ観たい、来週まで待ちきれない。そう観る方に思ってもらえるドラマ」

「VIVANT」はまさにそう。視聴者はストーリーの進展や謎の答えを一刻も早く知りたがった。「録画やTVerで後から観ればいいや」と思わせにくかった。これが熱狂を生み、高視聴率につながった。

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