「ポリコレ臭は感じない」実写版「ワンピース」成功の背景を分析

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多様性にも配慮

 原作ではしばしば古いジェンダー観や、あからさまなルッキズムなども指摘されてきたが、実写版のシーズン1についてはさほど気になる点はなかったように思う。原作ではやたらと女性を口説くサンジがややソフトに描かれていたのも、時代へのそれなりの配慮なのだろう。ホワイトウォッシュされない無国籍感や、原作通りの障害を持つキャラクターも登場する。必ずしも有色人種的な特徴を持っていないナミの姉、ノジコが黒人として登場していることなどは、時代を意識したものだろうが、それはそれで「ポリコレ臭」というほどのものは感じなかった。

 興味深いのは、ルフィに助けられ海軍に入ったヘタレ少年コビーを、トランスジェンダー男性の俳優が演じていること。コビーは海軍で鍛えられビジュアルがどんどん変わっていくキャラクターなのだが、それを俳優自身の変化と重ねていく目算があるのかも知れない。

 個人的には次のシーズンにおそらく登場するであろうトニートニー・チョッパーがどんなふうに表現されるのかに注目している。トニートニー・チョッパーは「悪魔の実」を食べて人獣化したトナカイ、ある時は小さくて可愛く、ある時は力強く巨大にと、様々に変化する。もちろんCGになるのだろうが、いやもしかして何か新しいアイデアが……なんてことも楽しみに、来シーズンを待ちたい。

渥美志保(あつみ・しほ)
TVドラマ脚本家を経てライターへ。女性誌、男性誌、週刊誌、カルチャー誌など一般誌、企業広報誌などで、映画を中心にカルチャー全般のインタビュー、ライティングを手がける。yahoo!オーサー、mi-mollet、ELLEデジタル、Gingerなど連載多数。釜山映画祭を20年にわたり現地取材するなど韓国映画、韓国ドラマなどについての寄稿、インタビュー取材なども多数。著書『大人もハマる韓国ドラマ 推しの50本』(大月書店)が発売中。

デイリー新潮編集部

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