「別班」のリアルはまるでダメサラリーマン! 元メンバーが証言「昼過ぎに帰る者も」「月に10本足らずの報告書でノルマ達成」
1回1万~2万円の謝礼
ドラマでは「別班」に入るとその班員の自衛隊内での記録がすべて消されると描かれていたが、それもなかったという。では、どんな活動を行っていたのか。
「情報源を“お客さん”と呼んでいました。新聞や雑誌などで北朝鮮や中国、ロシアに渡航している商社員や研究者を探す。で、“〇〇国のことを研究しているので勉強させてください”などと言って近付き、関係を築きます。もちろん自衛官とは名乗りません。『国際〇〇研究所』など架空の研究所を名乗り、名前も偽名。電話番号も代行サービスなどを利用し、名刺もそれ用のものを作りました」
得られる情報は何か。
「例えば極東ロシアに出入りしている人に向こうの事情を聞いたり、現地で発行されている新聞を送ってもらったり。また、中朝国境に行く日本人には、北朝鮮~中国貿易の物資の種類や量、移動状況、脱北者からの情報などをもらっていました。情報をもらったら1回1万~2万円ほどの謝礼を出します。一部、北朝鮮の人事情報などディープな話なら10万円近く出す例もありました。そうして集めた情報を週に数本、本部に上げていました」
この情報がさらに“上”に流れていくのだという。
「一番価値が高いといわれるのは軍事情報。ただ、こうしたものはなかなか手に入りません。渡航する協力者に高度な軍事情報を求めるのは危険が伴います」
また、海外に拠点を置くこともなかった。「別班」の実態は人に会ってネタを集める「情報屋」で、テロリストと戦うハードボイルドな組織ではなさそうだ。
北朝鮮の協力者に…
「ある別班長などは、トップ自ら組織の情報源を危険な目に遭わせてしまうことがありました」
と元メンバーが明かす。
「その別班長が中国のある朝鮮族ブローカーを情報源にしていたんです。彼の裏の顔は北朝鮮の工作員でした。ある時、班長はこのブローカーと接触する中で、自分の部下が情報源にしていた日本人ジャーナリストのことを漏らしていたようです」
その人物は中朝国境で商売を行い、北朝鮮の情報を「別班」に渡していたという。
「すると、それから間もなく、そのジャーナリストが中国当局に拘束されてしまった。それがわかった時、この別班長は“この件で〇〇〇(朝鮮族ブローカー)が動いているかもしれない。毎日のように携帯に連絡があったのに、この1週間連絡がない”と青い顔をしていました。彼が話したことで、ジャーナリストが『別班』の協力者であることが中国側に知られてしまったのでしょう。別班長は、逆にこの朝鮮族ブローカーに北朝鮮の協力者に仕立て上げられていったのです」
結局、ジャーナリストは1週間の拘束で日本へ送還されたが、一歩間違えれば死の恐れもあったとか。
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