「脱ジャニーズ」で今度はテレビ局がスポンサーに忖度 「クロ現」検証で思い出す民放が報じた“稲垣メンバー”
ギャラを全て本人に支払っても帳尻は合わない?
同事務所は今後1年間、タレントがCMや番組などに出演した際のギャラは全て本人に支払い、マネージメント料は受け取らないという。仕事が減るタレントの収入を補填する意味もあるのだろう。
具体的にどうなるのか。芸能界の常識で考えると、CMも番組もギャラの取り分は事務所が約7割で本人が約3割。それがタレントに10割入るとすれば、収入は7割増しとなる。木村拓哉の場合、CMの年間契約金額は基本的に8000万円が広告代理店業界の常識。3割の2400万円が10割の8000万円になれば大きい。
ただし、日本マクドナルドは木村との契約を更新しない方針だと発表している。同社からの契約金2400万円がゼロになってしまう。ほかのタレントも10割受け取れるようになろうが、帳尻は合わないのではないか。
「クロ現」と「紅白歌合戦」に見えるNHKのバランス
一方、CMとは無関係のNHK「クローズアップ現代(クロ現)」(月~水曜午後7時半)が同11日、「“ジャニーズ性加害”とメディア 被害にどう向き合うのか」を放送し、話題となった。メディアが沈黙した理由を考えたり、自己検証を行ったりと民放の報道より遥かに踏み込んだ。
取材には応じなかったものの、同局制作局長や理事を歴任し、現在はジャニーズ事務所顧問の若泉久朗氏にもアプローチ。これが出来たのもNHKだから。芸能界と深く関わる制作と報道の間に往き来がないためだ。
制作と報道の人事異動はないに等しい。昨年4月入局組までは制作と報道では採用枠も別々だったから、別会社と言っても良いくらいなのだ。新卒社員は一括採用で人事異動も活発な民放の報道だったら、制作の元幹部に取材を申し込むことは出来なかったのではないか。
民放の場合、制作と報道には一定の一体感がある。ただし、それが裏目に出ることも珍しくない。2001年、当時はジャニーズ事務所に所属していた元SMAPの稲垣吾郎(49)が道路交通法違反(駐車違反)ならびに公務執行妨害罪(のちに不起訴)の容疑で逮捕されながら、「稲垣メンバー」と称したのも報道が制作に配慮したことなどから。その結果、多くの視聴者から非難され、信頼を損ねた。
一方、NHKの報道が芸能を扱う場合、同僚であるはずの制作に取材をしない。というより、制作は報道の取材に一切協力しないのだ。信じがたい話だが、本当である。昭和期からそう。その分、相互批判が出来る。
性加害問題を放送界でいち早く特集したのも「クロ現」だった。5月17日には「“誰も助けてくれなかった” 告白・ジャニーズと性加害問題」を放送した。制作と報道が別会社のようなところが、芸能が社会問題化した時にはプラスに働く。
一方、同局の制作はどこへ向かうのか。その答えは11月中に行われる「紅白歌合戦」の出場歌手発表で出る。出場するジャニーズ勢は毎年多く、昨年は6組(KinKi Kids、関ジャニ∞、King & Prince、SixTONES、Snow Man、なにわ男子)だった。やはり毎年のことだが、ほかの芸能事務所から不満の声が噴出した。今年はどうなるか。
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