「性加害問題」でジャニーズファンの気持ちを思えば…SMAPファンの一途な思いが起こした“奇跡の新聞ジャック”が忘れられない

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 ジャニーズ事務所の「性加害事件」では、同事務所を猛烈に批判する人々に加え、このことについて知っていたにもかかわらず、彼らを起用したメディア・広告主を批判する声も多い。また、所属タレントに対しては「タレントとジャニー氏本人、そして事務所の体質は関係ない」という擁護はあるが、「あなた方も知っていたんでしょ?」「売れるために加害を受け入れたんでしょ?」という批判も。さらにはファンに対しては「あなた方が落としたお金がこの性加害に繋がっているのでしょ?」との声も存在する。

非主流派

 いずれも言下に否定しづらい指摘ではあるが、現在のファンの心境を考えるといたたまれない気持ちになる自分もいる。というのも、2016年夏、私はSMAPファンをめぐる動きに僅かながらかかわり、その後も動向を見つめ続けてきたからだ。関連した記事も複数執筆した。一体、何のことかといえば、SMAPファンが2016年9月以降、新聞の読者投稿広告欄をジャックし、ついには、ファン同士がお金を集めて新聞広告を掲載するに至った件だ。

 発端は2016年1月、SMAPが年内での解散を発表したことにある。これにファンは大きなショックを受け、ツイッター(現X)を中心になんとかSMAPの解散回避ができないか、切なる願いが投稿され続けた。そうしたなかでファン同士が連帯し、その思いはさらに強まっていった。

 実はこの時、ファンの間では事務所への批判がかなり目立っていた。SMAPは事務所内では“非主流派”とされており、彼らの育ての親であるマネージャーのI氏と事務所には距離があったというのだ。事務所がSMAPを冷遇しているという説もファンの間ではまことしやかに囁かれ、そうした経緯もあり、事務所批判は公然のものになっていたのである。

「花摘み」

 SMAPに対する事務所の扱いは良くない。だから彼らは解散・退所しなくてはならないのだ――。こういった意見が数多く見られたのは事実だ。

 しかし、2016年いっぱいは活動を続けるため、まだまだ時間はある。ファンは自分達でできることをそれぞれ考え、「世界に一つだけの花」をトリプルミリオンにするための運動、いわゆる「花摘み」を行うなどもした。さらにはクラウドファンディング等を使って皆でお金を出し合い、感謝・祝福と存続を願う意見広告をSMAPデビューの日である9月9日に新聞に出す、というアイディアもあった。

 しかし、全国紙の15段広告(1ページ)を買おうものなら、朝日新聞や読売新聞では数千万円は下らない。新聞広告はお得意様であれば割引もある。とはいえ、初めての依頼で、しかも、団体でなく“有志一同”の意見広告となれば割引はとても望めないだろう。その新聞の論調と合うような意見広告であれば多少の手心は加えられる可能性もあるが、何しろ、広告の趣旨が一アイドルグループの存続を願うものだから難しい。しかも、大手新聞社は系列に民放テレビ局とスポーツ紙が存在するため、ジャニーズ事務所批判とも捉えられる意見広告の掲載は、当然ながらハードルが高いはず。この状況は、今年9月7日のジャニーズ事務所の謝罪会見までと変わらない。同事務所批判はメディアではタブーだったのだ。

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